姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



交渉の疲れやストレスがピークに達した時に訪れたのが、播磨屋だった。

初めはこってりとしたメニューは胃にこたえるから避けたかったが、仲間内での評判がいい店だ。
食べてみたらどの料理もおいしいし、店のレトロな雰囲気も馴染めば気分が落ち着く。
周りの客や従業員の会話も耳に入るようになると、ドライバーや地元の人たちの生の声が聞こえてくる。

これまで知らなかった世界が、パッと目の前に開けていく気がした。
統計や予算の数字より、人の言葉が答えを導いてくれる。
不思議なことに、播磨屋に通い始めてからスタッフたちとの距離も縮まった。

湯浅家の人間なのに庶民的な店がお気に入りというのが、部下や同僚に受けたらしい。
それが交渉相手にも伝わったのか、始めの頃の警戒された空気はいつの間にか消えて、じっくり話を聞いていたら譲歩してくれるようにもなった。
次々に結果が残せるようになっていくと、年上の部下たちからも湯浅一族という立場ではない譲自身が信頼され始めた。



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