姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


なにより、播磨屋には叶奈がいた。
たまに会えない日があると、なんだか物足りない。

譲の顔色から察して、今日のおすすめを教えてくれる叶奈。
仕事がうまくいった日には「おじいちゃん特製のビーフシチューいかがでしょう」とか、遅くなった日には「軽いものを用意しましょうか」と声をかけてくれる。
どれもその日の体調にピッタリで、叶奈の優しい笑顔とおいしい食事が譲の心にゆとりを与えてくれた。

出会ってすぐに、店に通うことが欠かせないルーティーンになっていた。
叶奈との距離が近くなると同時に、土地の交渉もスピーディーに進むのも気のせいではないだろう。

(叶奈のおかげだな)

趣味や好きな作家の話など、お互いのことを少しずつ小出しにしながら会話を重ねていく。

「店に流れてる音楽、意外なチョイスだね」

レトロな店なのに、昭和の歌謡曲ではなくポップスが流れている。

「お母さんの趣味で、うちは九十年代のアメリカンポップスばかりなんです」

叶奈は母親が大好きなようで、よく話題にのぼった。
そういえば父親の話を聞いたことがなかったが、いつだったかサラリと両親が離婚していると言っていた。
叶奈は父親とは会っていないらしいが、まったく関心がなさそうだった。

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