姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
叶奈とは、会うべくして出会った相手だと感じている。
播磨屋に入ったとたん迎えてくれた笑顔の温かさ。その微笑みに、あの日の譲は救われたのだ。
仕事に行き詰まり、疲れ果てて頭の芯までガチガチに固まっていたが、叶奈を見たとたんにほんわりとほぐれていくのを感じたほどだ。
近くにはファミリーレストランや人気のラーメン屋だってあるのに、スタッフたちの意見は播磨屋一択だ。
「いらっしゃいませ」の挨拶が、いつしか「お疲れさま」になるくらいには常連になっていった。
これまで付き合った女性にも美しいと思う人はいたのだが、少しも譲の心に残っていない。
どの客にも気さくに話しかけ、手際よく料理を運んでいる叶奈。
華奢な体つきをしているのに、重そうなトレーを軽々と持ち運んでいるのには驚かされた。
テーブルを縫うようにリズミカルに歩いている赤いエプロン姿に、つい目がいってしまう。
外見に似合わずたくましくて、明るい笑顔が輝いていて。
叶奈にひかれていると気づくまでに、たいして時間はかからなかった。
同僚たちも譲の視線が叶奈にばかり向くせいか、最近では播磨屋へ食事に行くのに同行しなくなってきた。
わざと食事の時間帯をずらして、譲がひとりで行くように仕向けているのだ。
年上の部下たちからの気恥ずかしいような応援を、譲はありがたく受けとることにした。