姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



車はどうやら横浜に向かっていたらしい。
高速道路を下りてしばらく走ると、高層ビル群が見え始めた。
やがて車は坂道を登り、閑静な住宅街に入って行った。
道に面して洋館やモダンなデザイナーハウスといった豪邸が建ち並んで知いる。
ゆっくりと散歩しながら眺めたら楽しそうだなと、叶奈は車からぼんやりと景色を眺めていた。

(もしかしたら、お父さんの家はものすごいお金持ちなんじゃないかな)

運転手付きの車に乗せられて連れてこられたのは、お屋敷ばかりが立ち並んでいる場所だ。
遠藤の家とではアンバランスすぎて、麻子が松尾家に嫁いでいたということすら信じられない。
事情を聞きたくても、麻子は相変わらず眉を寄せていて厳しい表情のままだ。

目的地はかなり大きな洋館だった。門の前で車が一時停止したと思うと、鉄製のしゃれた門扉が自動で大きく開いた。
その中に乗用車はすべるように入っていく。

車は玄関前に横づけされ、運転手が先に降りてドアを開けてくれる。

「お疲れさまでございました」
「ありがとうございます」

叶奈が礼を言って降りると、田頭という運転手が少し驚いた表情を見せた。

「とんでもございません」

そう言いながらも、麻子が降りるまで頭を軽く下げたままだった。



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