姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
門の方を振り向けば、広々とした芝生や、まだ花は咲いていないがバラの生け垣が見える。
ため息が出そうになるくらいすてきなお屋敷だ。
車が着いたのがわかっていたのか、屋敷の中からエプロン姿の女性が顔を見せた。
「いらっしゃいませ。麻子様、叶奈様」
「こんにちは」
その女性の案内で、玄関から中に入った。
一歩足を踏み入れたとたん、叶奈はどこの国に迷い込んだのだろうと不思議な気分になった。
さっきまでは日本にいたはずなのに、どう見てもイギリスかフランスのマナーハウスをコピーしたようなインテリアだ。
叶奈は実際に見たことはないが、ロンドンに旅行した友人に見せてもらった写真とイメージが一致する。
ポカンとしていたら、奥から品よく和服を着こなした老齢の女性が姿を見せた。
グレーヘアだが、柔らかなウエーブを描く前髪ときちっとまとめられたシニヨンの絶妙なバランスが昔の映画女優のようだ。
きっと若い頃はかなり美しかっただろうと想像できる。
「いらっしゃい」
「ご無沙汰しております」
麻子が丁寧に頭を下げたので、叶奈もそれに倣ってお辞儀をした。
顔を上げると、その女性が眉をしかめている。
「その着物、どなたの趣味かしら」
「母の若い頃のものです。今日、大学の卒業式だったので」
叶奈が答えると、女性は短く「そう」と答えただけだった。
「お昼、まだでしょう。軽いものを用意させましたから、どうぞ召しあがって」
クルリと身を翻すと、着物にしては速いスピードでスタスタと歩いていく。
ついて来いということだろうかと思って麻子の顔を見たら、ぐっと奥歯をかみしめている。
なにを我慢しているのか気になったが、ここでは口にしない方がよさそうだ。