姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
祖父母らしい姿もあれば、メガネの男性がひとりで写っているものもある。
叶奈にどことなく似ているのが、姉の奈緒だろう。
様々な背景の写真が並んでいるが、なかでも豪華な振袖姿が印象に残った。成人式の記念だろうか。
それと比べたら、祖母には叶奈が着ているものが貧相に映ったのかもしれない。
(でも、これは私のお気に入りだから、気にしない気にしない)
そう心の中で唱えながらソファーに座ったら、名前を呼ばれた。
「叶奈さん」
「はい」
「改めまして、私は松尾琴子。あなたの祖母です」
「遠藤叶奈です」
この場合「初めまして」か「こんにちは」と言うべきか叶奈は迷った。
「ほんとに奈緒によく似ている」
「は、はあ」
「声までそっくり」
戸惑っている叶奈を見て、琴子はふうっとため息をつく。
「食事の様子はまあまあだったけど、それ以外はダメ。ちゃんと挨拶も出来ないなんて」
いかにも失望したといわんばかりの口調だ。
「ねえ、麻子さん」
色々と注意されるかと思ったが、どうやら祖母の矛先は麻子に向かったようだ。
「あなたも苦労したんだから、娘にはきちんと教えないと」
そういえば、この屋敷に着いてから麻子がひと言も発していないことに叶奈は気がついた。
その理由は、どうやら琴子にあるような気がする。
「申し訳ありません。わが家とこちらとでは暮らし方が違いますので無作法はお許しください」
やっと口を開いた麻子の言葉は、琴子に対しての謝罪だった。
いつも強気な麻子が珍しく緊張しているようで、その手はギュッと握りしめられている。