姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「お母さん、謝るのは私よ」
叶奈が麻子をかばうように言うと、琴子はムッとした表情に変わった。
「こういうところですよ、麻子さん」
ますます麻子が責められたので、叶奈もまた口を出してしまった。
「でも、母は関係ないと思います」
「あなたの態度、言葉使い、礼儀作法、そのすべてが母親の評価につながるの」
「叶奈、おやめなさい」
「母は立派な人です。離婚してから簿記とかいろいろ勉強して、資格を取って、働きながら私を育ててくれました」
叶奈は一気にまくし立ててしまった。
テーブルを挟んで向き合う琴子と叶奈は、どうやら相性が悪そうだ。
「叶奈、もう控えなさい。琴子様に失礼です」
そこまで言われて、叶奈はやっと口を閉じた。その時、パッと応接室のドアが開いた。
「お母さん、勝手になにやっているんですか」
飛び込むように入ってきたのは、細身で長身の男性だ。
銀縁のメガネをかけていて、仕立てのよさそうなグレーのペンシルストライプのスーツを着ている。
パッと見の印象では若く見えるが、髪には白髪が目立つし年齢不詳といった感じだ。ただ男性にしては、おっとりと柔らかな話し方をする。
この場には異質のやや高めの声だが、それすら独特の雰囲気を感じさせた。