姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「崇、帰ってきたの」
「お母さんが麻子を呼びつけたって聞いたもので」
この人がお父さんなのかと、叶奈はぼんやりと理解した。
もの心ついてから「お父さん」という単語を口にしたことがなかったからか、なんの感情もわいてこない。
「君が、叶奈?」
「は、はい」
「奈緒と似ているね。あ、姉妹だから当たり前か」
飄々とした物言いが場を和ませようとしているのか、この人の地なのかわからない。
「ちょうどいいわ。例のことを話そうと思っていたところなの」
「お母さん、それだけはやめてくれって言ったのに」
崇もソファーに座った。叶奈の正面が琴子、麻子の正面に崇が座ったことになる。
母の顔色はどんどん悪くなって、今では血の気が失せている。
「先日のこと、叶奈には話しておりません」
母の言葉に、琴子と崇は真逆の反応だった。
琴子は眉を寄せ、崇はうんうんとうなずいている。
「そうだね。叶奈には関係ない話だ」
「そうはいきません。大金を融通したのですよ」
「大金?」
お金が絡む話だとわかって、叶奈は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「そちらが困っているのを助けたのだから、こちらの要望も聞いていただかないと」
叶奈は要望という意味をドキドキしながら考えていた。
希望ではなく、琴子は要望とハッキリ言ったのだ。