姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



「こちらからは断れませんよ。もしも、あちらから断られたら考えましょう」

琴子は結論を濁した。意味ありげな気もしたが、叶奈にはもう考える余地はなかった。

「わかりました。奈緒のスペアになりますから、母を責めるのはやめてください」
「叶奈っ」

麻子の悲痛な声が聞こえたが、叶奈は琴子を見つめたまま視線を動かさない。

「責めるだなんて、人聞きの悪い」

琴子は不服そうだった。
きっとこの家では、誰からも指図されない立場なのだ。
だから奈緒は自分の思い通りになるよう育てたし、叶奈も素直に言うことを聞くと思っていたはずだ。

だが叶奈がこの話を受けたのは、琴子の言いなりになったからではない。遠藤の祖父母が大切にしている店のためだ。

「お見合いはします。断られても責任は問わないと約束してください」
「私が信用できないって言いたいの⁉」

とうとう琴子は声を荒げた。

「私が証人になるよ。叶奈は見合いすればいいだけだ」

崇が琴子をなだめ、間に立つような発言をしてその場を収める。

「わかりました」

叶奈がペコリと頭を下げると、琴子も鷹揚にうなずいた。

「わかってくれればいいの」

「では一度帰って、荷物を用意してきます」

「いえ、今日からここに住みなさい。必要なものはこちらで用意させます」

「そんな」
「少しでも早く慣れた方がいいわ」

麻子が口を挟みかけたが、崇が止めた。
これ以上こじれたら収集がつかないとでも思ったのだろう。


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