姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
その夜も琴子が出かけたのでリビングのソファーでゴロゴロしていたところに、崇が帰ってきた。
「お帰りなさい」
慌てて叶奈は姿勢を正す。
「ただいま。ひとりかい?」
「はい。琴子様はお出かけです」
なかなかおばあ様と呼べなくて、つい琴子様と口にしてしまった。
琴子が留守とわかると、崇はホッとした表情になった。
崇も琴子がいると、わが家とはいえ寛げないようだ。
「毎日がんばっているようだね」
「まあ、がんばらざるを得ない状況なので」
「君なら賢いから、上手くやれると思うけど」
相変わらず軽い口調だが、この妙な明るさが崇の通常の姿なのだろうかと、ふと疑問に感じた。
食事はすませていたのか、自室で着替えた崇は水割りを自分で用意している。
「なにかお手伝いしましょうか」
「これくらい自分でできるよ。ありがとう」
崇は叶奈とは少し間を空けつつも、同じソファーに座ってきた。
父と娘とはいえ、なんだかぎこちない距離だ。
「あの、お尋ねしてもいいですか」
「なに」
「母とはどこで知り合われたんですか」
叶奈はずっと聞きたかった。
松尾家のひとり息子と、ドライブインの娘の麻子とでは接点がなさすぎる。
別れたとはいえ両親ことだから、ストレートに聞いてみた。
「叶奈は、はっきりしているね。そういうところが麻子そっくりだ」
ハハッと笑いながら、崇は麻子との馴れ初めを話し始めた。