姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です

 

***



松尾家の庭にある桜が咲き、バラの生け垣にも色とりどりのつぼみがついた。
花の咲く庭を見るにつれ、叶奈は焦りを感じている。

横浜に連れてこられたのは三月だったのに、もうゴールデンウイークが過ぎてしまった。
奈緒は祖父が迎えに行ってもロサンゼルスから帰ってこないし、見合いの日程も決まらない。

崇から援助してもらっている以上、播磨屋のために奈緒のスペアになる決心はした。
それでも心の中は揺らいでいて、このままお見合いがなくなればいいのにと思うときもある。
メルボルンへ行くのは先送り状態だったし、譲との約束を破ってしまった罪悪感も抱えたままだ。

「日にちが決まらないのは、相手もお見合いする気がないのでは?」

このままでいいのかと琴子に尋ねても「相手の事情で日程が決まらないだけ」と繰り返す。
叶奈にはよくわからないが、琴子にとって幼なじみとの約束は絶対らしい。

ようやく琴子から礼儀作法に合格点がもらえるようになったら、庭に紫陽花が咲き始めていた。

叶奈がリビングルームで読書していると「お見合いの日程が決まった」と琴子がうれしそうにやってきた。

「お仕事の都合で帰国が遅れていたのですって。お医者様は忙しいわね」
「外国におられたのですか」

「ええ、ロサンゼルスの病院にお勤めだったの」



< 54 / 125 >

この作品をシェア

pagetop