姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
見合い当日は、梅雨時にしてはよく晴れていた。
着物姿の叶奈は少し蒸し暑いなと感じつつ、琴子とホテルにやって来た。
琴子がひとえの訪問着を選んでくれたおかげで、思っていたより袖の扱いは楽だ。
写真の奈緒は白地に花車が描かれた古典柄の振り袖だったが、叶奈は着ているのは少しくすんだピンクベージュで柄は洋花だ。
豪華すぎず、顔映りもよくて叶奈にはしっくりくる。
見合いするのは気が重いが、琴子が叶奈のためにわざわざ準備してくれたことは単純にうれしかった。
ホテル一階のラウンジはガラス張りだから、庭がよく見える。
窓際の席に案内されたが、すでに相手が着席していた。どうやら香川恭介はひとりで来ているようだ。
少し茶色っぽい髪は長めで、ゆるいウエーブがかかっている。
さわやかな白いシャツにネイビーのブレザースタイルは、とてもカジュアルな雰囲気だ。
気軽な服装だから、和服姿の叶奈とは不釣り合いに思える。
チラリと横を見たら、琴子もキュッと口を結んでいる。同じことを考えているのだろう。
「やあ、初めまして。遠藤叶奈さんですね」