姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
恭介とは、レストランのあるビルの一階ロビーで会う約束になっていた。
ビルの正面で車から降りると、待ち構えていたように恭介が姿を見せた。
「叶奈さん」
いきなり名前を呼ばれて驚いた。
「こ、こんばんは。お待たせしました」
「いえ、僕も今来たところです」
叶奈は恭介の案内でパーティー会場に向かった。
指定されたレストランは当日は貸し切りになっており、ビルの最上階にあるから大きなビルや町並みを一望できる人気の店らしい。
華やかな装いの男女。賑やかな音楽。テーブルには料理やお酒があふれるように並べられている。
日没の風景をゆっくりと楽しみたかったが、あっという間に恭介の友人たちに囲まれてしまった。
恭介は人気者らしく、同世代の男女を問わず次々に声をかけられる。
「こちらは?」
そばにいる叶奈も注目されて、華やかな美女たちから値踏みするような視線を向けられる。
「友人の遠藤叶奈さんだ。松尾奈緒さんの妹だよ」
「よろしくお願いいたします」
知らない人ばかりだから、叶奈は言葉少なに答えて微笑むだけにした。
無口なフリをして、ひたすら恭介の陰に隠れるようにしていた。
そんな叶奈を見て、コソコソと噂している声も聞こえてくる。
『奈緒さんの妹ってことは、松尾電機の?』『それにしては地味だな』に始まって、『奈緒さんに姉妹がいたかしら』という指摘もある。
なかには『あそこはご両親が離婚しているから』という事情通の人の声も聞こえた。
叶奈のことはSNSであっという間に広まることだろう。どちらにしても、あまりいい気分ではない。
叶奈は周りから悪意のようなものを感じて、ズンと気が重くなってきた。
(パーティーに来なければよかった)