姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
叶奈のことは気になるが、断わりにくい雰囲気だったので話を聞くことにした。
奥まった席に向き合って座ると、ポツポツと話し始めた。
「実は、就職先を探していまして」
「叶奈さんのですか」
「お恥ずかしいですが、私のです」
その時ふいに、大将が深刻な顔で中年の男性と話していたのを思い出した。
叶奈も何の話か気にしていたが、あの頃から店に金銭的な問題が起こっていたのだろうか。
播磨屋は客も多いし味もいい。十分採算が取れていて、優良経営にしか見えない店だ。
「土地を買うことになったのでお金を借りたんですが、一日でも早く返したくて」
「買った? ここは借地だったんですか」
「はい。駐車場の半分ぐらいは借りていた土地なんです」
ざっと譲が計算しても数千万円になりそうで、なかなかの大金だ。
しかも湯浅ホールディングスが物流センターを建設するニュースが流れてから、この辺りの土地の値段は上がっているはずだ。
今の時期に買うのは大変だろうと、譲はうっすら責任を感じたくらいだ。
「えっと、銀行で何年ローンを組まれたんですか」
差し出がましいかと思ったが、つい訪ねてしまった。
「いえ、そういうわけでは……」
麻子が言葉を濁したので、譲はそれ以上の詮索はやめた。
銀行ではなく個人から借りたとしたら、利子を考えると冷や汗が流れる。