姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
譲は大金の出所はともかく、仕事探しに絞って話を聞くことにした。
「どういった仕事をお探しですか」
「この年ですからぜいたくはいいません。でも簿記と宅建やFPの資格は持っています」
叶奈が幼い頃に離婚して以来、あれこれ資格を取って保険会社や不動産会社で働いてきたという。
「最近はこの店の経理を担当しています。私、料理はサッパリなので」
「それだけの資格があるなら、うちの事務所で臨時の社員を募集しているんです。いかがでしょうか」
「物流センターでの事務職ですね」
「はい。建設現場の事務所で募集をかけています。ぜひ書類を提出してください。採用担当者には話しておきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
麻子はうっすらと涙ぐむほど喜んでいる。
「……この年だから、もうダメかと思っていました」
それほど金銭的に困っていたのかと、譲も心配になってきた。
「叶奈さんは、このことをご存知なんですか」
「あの子には私が働きに出ることを知らせたくないんです。黙っていてくださいね」
「あ、はい」
譲と叶奈が連絡を取り合っているように思われているが、まだそこまでの関係とは言えないのが残念だ。
「しばらく留守」と言っていたが、どれくらいの期間だろう。いったい叶奈はどこにいるのか。
どうも居場所を隠したいようだから、気安く尋ねるのは気が引ける。
仕事を探していたり、突然叶奈が姿を見せなくなったり、播磨屋で何かが起こっている。
とにかく叶奈にしばらくは会えなくなったことだけは確かだった。