姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
外に出るきっかけが欲しかった叶奈は、カフェ「ミエル」でアルバイトを始めた。
午前十時から午後三時くらいまで。前田が気分で開ける店だから、ざっくりした時間だ。
気分によっては早めに閉店する日もあるらしい。これくらいのアルバイトなら、琴子たちに知られる心配はなさそうだ。
店で体を動かしていれば、嫌なことは忘れられる。
それに前田はビジネスマン時代に海外生活の経験があるそうで、参考になる話ばかりしてくれる。
一週間も経たないうちに、叶奈はこの店でのアルバイトが楽しくなっていた。
「叶奈ちゃん、明日の土曜日少し遅くまで店を開けていても大丈夫かい」
いつもは午後三時までなのに、明日は少し延長して営業するようだ。
コーヒーを求めてわざわざ訪れる客のために開けておくらしい。
「はい。大丈夫です」
恭介からはまったく連絡がないから、明日も時間はたっぷりある。
叶奈は、恭介から連絡がないのは断られる前兆のような気がしていた。