姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
叶奈は走りすぎて息が苦しかった。
ハアハアと息切れしながらマンションに帰ってきたが、悪いことは続くものだ。
今度は恭介から連絡が入った。
「ま、またパーティーでですか」
『今度は美容整形外科を開業している友人のなんだ』
まだ水着の季節ではないが、ホテルの屋内プールで顧客や友人を集めて一週間後にパーティーを開くという。
美容関係者ばかりの集まりだから、わざわざ美しさが競えるようにプールを選んだらしい。
「プールはちょっと」
『水着じゃなくても、サンドレス風なら大丈夫だから』
「わかりました」
それなら叶奈の所持金でなんとかなりそうだ。
『どうしても、君に話したいことがあるんだ』
恭介の言葉を聞いて、叶奈は今度こそ断られるかもしれないと期待する。
『当日はマンションまで迎えに行くよ』
「え? マンションの場所をご存知なんですか?」
『もちろん祖父から聞いているよ』
琴子と恭介の祖父の間には、どんなネットワークがあるのだろう。
なんとしても孫同士を結婚させたい執念のようなものすら感じられる。
『じゃあ、また』
「は、はい」
電話を切ってからも、叶奈の気分はどんよりとしたままだった。