姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
奈緒には家族に愛されているという実感がない。
だからお見合いしろと言われても、結婚に対して希望も理想も持てないのだ。
人格者として知られている祖父には、もうひとつの家庭がある。
琴子は寂しいくせに、祖父が家に帰ってこなくても平気なふりをしている。
琴子が奈緒にお見合いを勧める理由もだんだん分かってきた。
どうやら事情があって別れた恋人と、自分たちの子どもか孫を結婚させようと約束していたらしい。
自分たちが結ばれなかった夢を、子や孫に託したのだ。
でも父は家族の反対を押し切って、恋愛結婚してしまった。
それなのに数年で離婚したから、琴子はますます自分の考えが正しいと思っている。
同じ道を歩ませまいと、奈緒だけは幼なじみの孫と結婚させようと必死だ。
それでもいいと思っていた。
愛しあっていたはずの両親だって別れたし、祖父母の仲も冷え切って、夫婦とはいえ形だけ。
見合いしろと言われても、相手のことは医者というだけで名前も年齢も聞かされていない。奈緒からも尋ねたりはしなった。
理想と現実とは一致しない。
そう思えば、年上だろうと年下だろうと、痩せていようが太っていようが、どんな相手だってかまわなかった。