姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
毎日のように市内のあちこちで開かれるパーティー。
おしゃべりして、お酒を飲んで、足が棒になるまで踊った。
(生きているって、こういうことだったのかもしれない)
奈緒はやっと気がついた。家族のいいなりに生きることは、もう無理だったのだ。
遅れてやってきた反抗期だと言われても、都合のいい子ではいられない。このまま結婚なんてしたくない。
どのパーティーでも、楽しそうな恋人たちの姿を見かけた。
友人と一緒に騒いでいても、奈緒はひとりぼっちだと感じる。
寂しくて、せつなくて、誰かに温めてほしくなった。たった一夜の関係でもいい。
愛されている実感がほしかった。
そんなある日、新年を迎えるパーティーで周囲の注目を集めていた男性に心を奪われた。
奈緒は、出会ってしまった。
スラリと背が高くて、整った顔立ち。柔らかそうな茶色の髪。とろけそうな笑顔。明るい話し声。
心を奪われてしまった奈緒に、その人は話しかけてきた。
「寂しそうに見えるけど、大丈夫?」
自然に手を取られ、いつの間にか踊っていた。
「君の瞳はキラキラしているね。とってもきれいだ」
そう耳元でささやいたのは、ひと夜の快楽の相手を求めていたからだろうか。
それでもかまわない。奈緒は出会った瞬間から、その人のすべてにひかれていたから。
「ありがとう。あなたもステキ」
心の中にざわざわと波風を立てるような、甘い声をもっと聴きたい。
スーツ越しでもわかる細身だけど筋肉質な体に触れたい。