姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


少しお酒を飲んで、おしゃべりして、ふたりで冗談を言いあって笑いころげた。

カウントダウンが始まって、新年を迎えると同時にキスだってした。

それは驚くくらい官能的なキスだった。相手もそう感じたのか、唇が離れてしばらく見つめあったくらいだ。

「君とふたりになりたい」
「私も」

それからホテルの部屋へ移動した。お互いに名前も年齢も職業もあかさずに、欲だけに溺れた。

「初めてなの?」

「もう初めてじゃないわ」

その人は優しかった。
時間をかけて、ゆっくりと奈緒に触れてくれた。タトゥーには、何度もキスをしてくれた。

(愛されている!)

そう感じられる愛撫だった。
緊張する体を開いて、それから奈緒の初めてを奪っていった。

(後悔なんかしない)

だけど翌朝ホテルのベッドで目覚めたら、もう彼はいなかった。
奈緒も慌てて服を着て、ホテルを出た。

太腿のタトゥーを見られたし、お酒の勢いで寝る女だと思われているかもしれない。
あの人とは、もう二度と会うことはないだろう。



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