お飾り妻は本日限りでお暇いたします~離婚するつもりが、気づけば愛されてました~
7.
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日本に帰国してからというもの、日々忙しくしているうちにあっという間に十二月になっていた。
沙織はもちろん、守頭も、パリにいた間に溜めていた仕事に忙殺されて、平日はろくにくつろぐこともできないまま寝て居た。
その分、二人とも休日はしっかり取っていて、約束通りにパリで購入したいろんなお店のショコラとコーヒーを手に古いフランス映画の鑑賞会をしたり、動画サイトで沙織がみつけたフランス風の煮込み料理を二人で一日かけて実践したり、あるいは、時折めかしこんで外で食事やデートもした。
そして週末になると決まって守頭は激しく、熱烈に沙織を求めた。
平日は仕事に疲れている沙織を気遣って、キスや抱擁などの甘い触れあいで澄ませる分、週末の愛し方と可愛がり方は半端ではなく、徹頭徹尾蕩かされて、酷いときは一日中二人でベッドにいて、食事は高級ホテルから取り寄せたもので澄ませる、なんて自堕落かつ愛にまみれた過ごし方をする。
好き、と言ったことでそれまで我慢していたものが溢れ出たみたいに、沙織の心は守頭へ傾倒していて、以前までは旦那様と他人行儀に呼ぶことが多かったのに、今では瑛士さんとばかり呼んでいて、旦那様ということもほとんどなくなっていた。
結婚してからの一年、どうして触れあわず、ろくに会話もせずに済ませられたのか不思議なほど今は仲睦まじく、そのことで逸樹や篠山さんによくからかわれた。
逸樹は帰国直後は、こちらが気まずくなるほど仕事漬けだったが、クリスマス近くになってようやく失恋から立ち直ったようで、以前と変わらぬ軽口や、余計な仕事を投げては沙織を困らせ笑う。という、高校時代となんらかわらぬ付き合いに戻っていた。
どうやら、新しくアシスタント兼秘書として採用された年下の女性が彼になにか言ったらしく、それから二人は時折食事に出かけているらしいが、それはもう、沙織の預かり知れない話だった。
くだんの男雛は無事に沙織と守頭の家に届けられ、特注のガラスケースに入れてリビングの特等席に飾ってある。
実家にある男雛がかけたひな飾りを取りに行きたいが、無理に休暇を取ったためか、守頭の多忙さは尋常でなく、正月は京都の実家にもどれず、東京で過ごすことになりそうだった。
それでもイベントはしっかり抑えている男で、クリスマスは東京駅に併設するホテルでディナーしたまま宿泊し、正月は金沢まで小旅行して、二人で温泉を満喫した。
もっとも、温泉付きの部屋で湯に浸かりまくるという普通の堪能の仕方をした沙織に対し、守頭はなんだかんだと理屈をつけては妻との混浴を――そして、言うまでもない色事を――たっぷり楽しんだのだったが。
ともあれ瞬く間に日が過ぎて、ああ、もう、明日は旧正月になる、一月も中旬だなと仕事帰りの道を歩いていた。
街はバレンタインデーのディスプレイに切り替わり始めたところで、あちこちにチョコレートのスイーツや、チョコレート色やデザインをあしらった商品がならびだしていて、見て居るだけでも楽しい。
バレンタインデーとは、こんなにワクワクするイベントだっただろうかと、足取りも軽く街路を歩く。
どうせなら、少し早い下見を決め込んで、いろんなチョコレートを味見して、最高の一日を守頭に贈るというのはどうだろう。
クリスマスを、食事からプレゼントからなにまですっかり守頭に演出されたお返しだ。
(そうだ、篠山さんとショップ巡りをしても楽しいかもしれない)
早速、明日提案してみよう。彼女もチョコレートに悩んでいたみたいだし。
などと考えながら家まで帰り着き、スーツのジャケットを脱いで、家事に移る前にひと息入れようと、紅茶の用意をしていたところだ。
不意にコンシェルジュデスクからのコールが入り、来客を告げられる。
三見頼子だ。
(一体、なんの用事かしら……)
年末に、一月中には解雇すると守頭が離していたのを耳にしたが、それについての直訴だろうか。
だが生憎というか運よくというか、守頭はまだ帰宅していない。
部屋に上げるべきかどうか迷っていると、奥様の実家のことで大切な話があると告げられ、沙織はつい、上げてくださいと口にしていた。
結婚してから、母とは定期的に連絡をとっており、その電話口で父は相変わらずだが沙織が嫁いで寂しそうよ。などと聞かされていたが、なにかあったのだろうか。
身体は健康だが、そもそもお坊ちゃま育ちで人を見る目があまりない、そのくせ頑固で亭主関白至上主義な父だ。
またなにかやらかして、守頭に迷惑をかけているのかもしれない。
その場合、沙織に心配を掛けさせまい、あるいは気負わせまいと守頭がなにも言わず処理している可能性もある。
迷った末、チャイムがなった扉をあけると、どこか疲れた風な三見が苦笑しそこに立っていた。
日本に帰国してからというもの、日々忙しくしているうちにあっという間に十二月になっていた。
沙織はもちろん、守頭も、パリにいた間に溜めていた仕事に忙殺されて、平日はろくにくつろぐこともできないまま寝て居た。
その分、二人とも休日はしっかり取っていて、約束通りにパリで購入したいろんなお店のショコラとコーヒーを手に古いフランス映画の鑑賞会をしたり、動画サイトで沙織がみつけたフランス風の煮込み料理を二人で一日かけて実践したり、あるいは、時折めかしこんで外で食事やデートもした。
そして週末になると決まって守頭は激しく、熱烈に沙織を求めた。
平日は仕事に疲れている沙織を気遣って、キスや抱擁などの甘い触れあいで澄ませる分、週末の愛し方と可愛がり方は半端ではなく、徹頭徹尾蕩かされて、酷いときは一日中二人でベッドにいて、食事は高級ホテルから取り寄せたもので澄ませる、なんて自堕落かつ愛にまみれた過ごし方をする。
好き、と言ったことでそれまで我慢していたものが溢れ出たみたいに、沙織の心は守頭へ傾倒していて、以前までは旦那様と他人行儀に呼ぶことが多かったのに、今では瑛士さんとばかり呼んでいて、旦那様ということもほとんどなくなっていた。
結婚してからの一年、どうして触れあわず、ろくに会話もせずに済ませられたのか不思議なほど今は仲睦まじく、そのことで逸樹や篠山さんによくからかわれた。
逸樹は帰国直後は、こちらが気まずくなるほど仕事漬けだったが、クリスマス近くになってようやく失恋から立ち直ったようで、以前と変わらぬ軽口や、余計な仕事を投げては沙織を困らせ笑う。という、高校時代となんらかわらぬ付き合いに戻っていた。
どうやら、新しくアシスタント兼秘書として採用された年下の女性が彼になにか言ったらしく、それから二人は時折食事に出かけているらしいが、それはもう、沙織の預かり知れない話だった。
くだんの男雛は無事に沙織と守頭の家に届けられ、特注のガラスケースに入れてリビングの特等席に飾ってある。
実家にある男雛がかけたひな飾りを取りに行きたいが、無理に休暇を取ったためか、守頭の多忙さは尋常でなく、正月は京都の実家にもどれず、東京で過ごすことになりそうだった。
それでもイベントはしっかり抑えている男で、クリスマスは東京駅に併設するホテルでディナーしたまま宿泊し、正月は金沢まで小旅行して、二人で温泉を満喫した。
もっとも、温泉付きの部屋で湯に浸かりまくるという普通の堪能の仕方をした沙織に対し、守頭はなんだかんだと理屈をつけては妻との混浴を――そして、言うまでもない色事を――たっぷり楽しんだのだったが。
ともあれ瞬く間に日が過ぎて、ああ、もう、明日は旧正月になる、一月も中旬だなと仕事帰りの道を歩いていた。
街はバレンタインデーのディスプレイに切り替わり始めたところで、あちこちにチョコレートのスイーツや、チョコレート色やデザインをあしらった商品がならびだしていて、見て居るだけでも楽しい。
バレンタインデーとは、こんなにワクワクするイベントだっただろうかと、足取りも軽く街路を歩く。
どうせなら、少し早い下見を決め込んで、いろんなチョコレートを味見して、最高の一日を守頭に贈るというのはどうだろう。
クリスマスを、食事からプレゼントからなにまですっかり守頭に演出されたお返しだ。
(そうだ、篠山さんとショップ巡りをしても楽しいかもしれない)
早速、明日提案してみよう。彼女もチョコレートに悩んでいたみたいだし。
などと考えながら家まで帰り着き、スーツのジャケットを脱いで、家事に移る前にひと息入れようと、紅茶の用意をしていたところだ。
不意にコンシェルジュデスクからのコールが入り、来客を告げられる。
三見頼子だ。
(一体、なんの用事かしら……)
年末に、一月中には解雇すると守頭が離していたのを耳にしたが、それについての直訴だろうか。
だが生憎というか運よくというか、守頭はまだ帰宅していない。
部屋に上げるべきかどうか迷っていると、奥様の実家のことで大切な話があると告げられ、沙織はつい、上げてくださいと口にしていた。
結婚してから、母とは定期的に連絡をとっており、その電話口で父は相変わらずだが沙織が嫁いで寂しそうよ。などと聞かされていたが、なにかあったのだろうか。
身体は健康だが、そもそもお坊ちゃま育ちで人を見る目があまりない、そのくせ頑固で亭主関白至上主義な父だ。
またなにかやらかして、守頭に迷惑をかけているのかもしれない。
その場合、沙織に心配を掛けさせまい、あるいは気負わせまいと守頭がなにも言わず処理している可能性もある。
迷った末、チャイムがなった扉をあけると、どこか疲れた風な三見が苦笑しそこに立っていた。