【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「あの、どうしても、マティス殿下とカミラさまの婚約は白紙にできないのでしょうか?」
「どうしたんだい、マーセル。なにか気になることでも?」
「マティス殿下とカミラさまでは、その……あまり相性が良くないような気がしまして……」
自分でこう口にするのは、少し抵抗があるけれど……婚約を白紙にしてほしいから、言葉にした。
お父さまたちは驚いたように目を丸くし、わたくし――『マーセル』がそんなことを言うとは思わなかったのだろう。
「きみはマティス殿下と親しいとは聞いていたが、そんな話もする仲なのか?」
すっと目元を細めて見極めるように低い声で問いかけるお父さま。
じっとその瞳を見つめながら、こくりとうなずいた。
すでに、マーセルとマティス殿下には身体の関係がある。
そして、マティス殿下はマーセルが本来の公爵令嬢であることも知っていた。
「……そうか。殿下はどこまで……ご存知なのだろうな」
「公爵さま?」
ぱちん、とお父さまが指を鳴らす。
こうして魔法を使うところを見るのは、初めてだ。これは……防音の魔法?
こちらからは外の声が聞こえるけれど、この魔法の範囲内にいる人たちの声は決して外に漏れないという、防音の魔法だろう。
よく使われるのは会議のときだ。
「きみたちは、どこまで知っている?」
「……なにを、でしょうか?」
「とぼけなくてもいい。どうせ知っているのだろう。マーセル、お前が本来ならば――公爵家の令嬢として育つべきだったことを」
「どうしたんだい、マーセル。なにか気になることでも?」
「マティス殿下とカミラさまでは、その……あまり相性が良くないような気がしまして……」
自分でこう口にするのは、少し抵抗があるけれど……婚約を白紙にしてほしいから、言葉にした。
お父さまたちは驚いたように目を丸くし、わたくし――『マーセル』がそんなことを言うとは思わなかったのだろう。
「きみはマティス殿下と親しいとは聞いていたが、そんな話もする仲なのか?」
すっと目元を細めて見極めるように低い声で問いかけるお父さま。
じっとその瞳を見つめながら、こくりとうなずいた。
すでに、マーセルとマティス殿下には身体の関係がある。
そして、マティス殿下はマーセルが本来の公爵令嬢であることも知っていた。
「……そうか。殿下はどこまで……ご存知なのだろうな」
「公爵さま?」
ぱちん、とお父さまが指を鳴らす。
こうして魔法を使うところを見るのは、初めてだ。これは……防音の魔法?
こちらからは外の声が聞こえるけれど、この魔法の範囲内にいる人たちの声は決して外に漏れないという、防音の魔法だろう。
よく使われるのは会議のときだ。
「きみたちは、どこまで知っている?」
「……なにを、でしょうか?」
「とぼけなくてもいい。どうせ知っているのだろう。マーセル、お前が本来ならば――公爵家の令嬢として育つべきだったことを」