【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「そ、そういうお前たちはどうなんだ!」
「俺は現在、カミラ嬢を口説き中。どう見てもマティス殿下とカミラ嬢のあいだに、愛は見えないしね」
「……それはまぁ、認めるが。政略結婚なんてそんなもんだろう」

 否定はしない。政略結婚で結婚をしてから愛を育む。

 それが貴族にとっては普通だもの。

「俺の国は恋愛結婚が主だよ。マティス殿下はカミラ嬢を愛していない。マーセル嬢を愛しているのだろう? なら、この婚約を白紙にするのは、あなたにとってもプラスなのでは?」

 レグルスさまがにやりと口角を上げた。

 そして、マティス殿下は黙り込んでしまった。

 マティス殿下はなにを考えているのかしら……? 少し考えたあと、マティス殿下はわたくしたちを見て、眉間に皺を刻む。

「そもそも、カミラはどうなんだ? 彼に口説かれていることは、リンブルグ王国を背負うことになるんだぞ」
「……わたくしは、それも悪くないと思っておりますわ。彼は、わたくしを必要としてくれた、唯一の人ですから」

 わたくしがそう言い切ると、その言葉が意外だったのかマティス殿下は言葉を()んだ。

 そして、すっと目元を細めて「……ふぅん」と面白くなさそうにつぶやく。

 愛していないわたくしを、なぜ離そうとしないの?

 ……そこで、一つの仮説を思い付いた。

 マティス殿下はただ、愛でるためだけのマーセルを望んでいるのかもしれない、と。
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