【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「わたくしとの婚約を、白紙にしてください」
「――は?」
マティス殿下は目を見開いた。わたくしは彼の前で従順なフリをしていたから、こんなことを口にするとは思わなかったのだろう。
婚約者として、彼を立てることばかりをしていたから……
「どういうつもりだ?」
「マティス殿下は、マーセルを愛しているのでしょう?」
「まさか、お前……マーセルをいじめたのか!?」
……この人はどうして、そんなことに考えつくのかしらね。
呆れたようにわたくしがため息を吐けば、「そうなんだな!?」となじられた。
「わたくしとマーセルは学科は別ですのに、どうしてわたくしが彼女をいじめられるとお思いで?」
「そんなの、お前が声をかけたら加担するものもいるだろう」
「わたくしに、そんな暇はありませんわ」
普段のタイムスケジュールを口にした。それはもう、流暢に。
段々と、マティス殿下の顔色が青くなっていく。わたくしのタイムスケジュールを知ろうともしなかった人だから、こんなにぎちぎちに組まれているとは考えもしなかったのでしょう。
こんなに忙しい日々を過ごしていたわたくしが、マーセルをいじめられるわけない。
「……いくらなんでも、詰め込みすぎだろ!?」
「ベネット公爵方におっしゃってください。わたくしのタイムスケジュールを管理しているのは、彼らなので」
我ながら、冷たい声が出た。
そんなわたくしの様子を気遣うように、レグルスさまがこちらに視線を向ける。
「……マティス殿下。俺はあなたに一騎打ちを申し込む」
「はぁ!?」
理解できないとばかりにマティス殿下が叫ぶ。
「ベネット公爵にも許可はいただいた。俺が勝ったら、カミラ嬢との婚約を白紙にしてもらう」
「なにを勝手なことを……!」
「……勝手なことをしているのは、マティス殿下のほうでしょう? わたくしという婚約者がいながら、マーセルと関係を持つなんて」
肩をすくめてつぶやくと、マティス殿下はぎょっとしたように目を丸くする。どうしてそのことを知っているのだと顔に書いてあるわ。
わたくしが呆れたように息を吐けば、ぐっと拳を握る。
「――は?」
マティス殿下は目を見開いた。わたくしは彼の前で従順なフリをしていたから、こんなことを口にするとは思わなかったのだろう。
婚約者として、彼を立てることばかりをしていたから……
「どういうつもりだ?」
「マティス殿下は、マーセルを愛しているのでしょう?」
「まさか、お前……マーセルをいじめたのか!?」
……この人はどうして、そんなことに考えつくのかしらね。
呆れたようにわたくしがため息を吐けば、「そうなんだな!?」となじられた。
「わたくしとマーセルは学科は別ですのに、どうしてわたくしが彼女をいじめられるとお思いで?」
「そんなの、お前が声をかけたら加担するものもいるだろう」
「わたくしに、そんな暇はありませんわ」
普段のタイムスケジュールを口にした。それはもう、流暢に。
段々と、マティス殿下の顔色が青くなっていく。わたくしのタイムスケジュールを知ろうともしなかった人だから、こんなにぎちぎちに組まれているとは考えもしなかったのでしょう。
こんなに忙しい日々を過ごしていたわたくしが、マーセルをいじめられるわけない。
「……いくらなんでも、詰め込みすぎだろ!?」
「ベネット公爵方におっしゃってください。わたくしのタイムスケジュールを管理しているのは、彼らなので」
我ながら、冷たい声が出た。
そんなわたくしの様子を気遣うように、レグルスさまがこちらに視線を向ける。
「……マティス殿下。俺はあなたに一騎打ちを申し込む」
「はぁ!?」
理解できないとばかりにマティス殿下が叫ぶ。
「ベネット公爵にも許可はいただいた。俺が勝ったら、カミラ嬢との婚約を白紙にしてもらう」
「なにを勝手なことを……!」
「……勝手なことをしているのは、マティス殿下のほうでしょう? わたくしという婚約者がいながら、マーセルと関係を持つなんて」
肩をすくめてつぶやくと、マティス殿下はぎょっとしたように目を丸くする。どうしてそのことを知っているのだと顔に書いてあるわ。
わたくしが呆れたように息を吐けば、ぐっと拳を握る。