【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

抜き打ちテスト。

 ――翌日、マティス殿下から呼び出されて、いろいろなことを話し合ったと、レグルスさまが教えてくれた。

 それから一気に話が学園中に広がり、マティス殿下とレグルスさまの一騎打ちの話題で学生たちは盛り上がっている。

 どちらが勝つのかわからないからこその、盛り上がりなのだろう。

 マティス殿下は騎士学科で負けなしと言われている。

 そして、レグルスさまもリンブルグで頂点に立てるほどの実力者。強いのなら、どうしてその実力をここまで見せてこなかったのかしら?

 もしかしたら、レグルスさまはレグルスさまなりに、いろいろと考えていたかもしれない。

 学生たちがわいわいと騒いでいるのを聞きながら、授業を受けているとひそひそと小声でマティス殿下とレグルスさま、どちらが勝つのかを賭けるような声が聞こえる。

 マティス殿下に賭ける人が多いみたいだけど……

「もう、みなさん! 授業に集中してください!」

 先生がそう叫ぶ。でも、きっとその話題に混ざりたいのだろう。

 うずうずしているように見える。これはもう、授業にならなそうね。

 ぱらりと教科書を捲っていると、レグルスさまの姿を思い出した。

 ボロボロになっていた教科書もノートも、彼の魔法できれいにしてもらった。そっと教科書を撫で、ゆっくりと息を吐く。

 レグルスさまのあの魔法は、いったいなんだったのかしら……?

 文字や落書きを本人に返す、なんてことができるのは……レグルスさま独自の魔法? それとも、リンブルグでは当たり前のことなのか……あとで確認しておきましょう。
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