【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
彼はまったく、わたくしを見ようとしなかったのだと……そう考えて腑に落ちた。やっぱりわたくしたち、相性悪そうね、マティス殿下。
「カミラはずっと前を歩いていた。どんなにもがいても、追いつけることがない場所に歩き続けていた。あいつが天才なら、オレは凡才だと城の連中が噂し、広がっていった! オレがどんなに努力しても、だ!」
声を荒げるマティス殿下。彼がこんなにも感情を露わにするのを、初めて見た。
……確かに、そんな噂が城内にあったのは、知っている。誰が流したのかはわからない。だけど、そのことに関して彼はなにも言わなかった。わたくしにも、なにもしなくていいと口にしていた。本当はずっといやだったのね……
「だから、彼女に冷たくした?」
「どうせ婚約者は変えられない。カミラを望んだのは、オレではなく父だからな」
レグルスさまはぐいっと乱暴に頬の血を拭い、呆れたような声色でマティス殿下に問いかける。
彼はその問いに対して、忌々しそうに表情を歪めて嗤う。
「わかるか? 父はいつだって、カミラにだけ甘かった。まるでオレは付属品だとばかりの目でずっと見られていたオレの気持ちが!」
――マティス殿下、そんなことを思っていたのね。
婚約者としてずっと傍にいたのに、気付かなかった。
もしかしたら、わたくしたちは似たもの同士だったのかもしれないわ。
「わかるはずがないだろう?」
再び、キィン、と金属と金属のぶつかる音が聞こえた。でも、それは終わりを告げる音だった。
マティス殿下の剣が吹き飛ばされたのだ。剣はくるくると宙を舞い、床に転がる。
「審判、判定は?」
「あ、ああ。勝者、レグルス!」
先生がそう宣言すると、しんと静まり返ったパーティー会場内がわぁぁああっ! と盛り上がった。
「カミラはずっと前を歩いていた。どんなにもがいても、追いつけることがない場所に歩き続けていた。あいつが天才なら、オレは凡才だと城の連中が噂し、広がっていった! オレがどんなに努力しても、だ!」
声を荒げるマティス殿下。彼がこんなにも感情を露わにするのを、初めて見た。
……確かに、そんな噂が城内にあったのは、知っている。誰が流したのかはわからない。だけど、そのことに関して彼はなにも言わなかった。わたくしにも、なにもしなくていいと口にしていた。本当はずっといやだったのね……
「だから、彼女に冷たくした?」
「どうせ婚約者は変えられない。カミラを望んだのは、オレではなく父だからな」
レグルスさまはぐいっと乱暴に頬の血を拭い、呆れたような声色でマティス殿下に問いかける。
彼はその問いに対して、忌々しそうに表情を歪めて嗤う。
「わかるか? 父はいつだって、カミラにだけ甘かった。まるでオレは付属品だとばかりの目でずっと見られていたオレの気持ちが!」
――マティス殿下、そんなことを思っていたのね。
婚約者としてずっと傍にいたのに、気付かなかった。
もしかしたら、わたくしたちは似たもの同士だったのかもしれないわ。
「わかるはずがないだろう?」
再び、キィン、と金属と金属のぶつかる音が聞こえた。でも、それは終わりを告げる音だった。
マティス殿下の剣が吹き飛ばされたのだ。剣はくるくると宙を舞い、床に転がる。
「審判、判定は?」
「あ、ああ。勝者、レグルス!」
先生がそう宣言すると、しんと静まり返ったパーティー会場内がわぁぁああっ! と盛り上がった。