【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「そして、マティス殿下の次の婚約者には、マーセル・カースティン男爵令嬢を推薦しますわ」

 わたくしの言葉に、周りはさらにざわついた。

 カースティン男爵夫妻と、ベネット公爵夫妻をチラチラと見る人たちもいる。

 あら、お父さまもお母さまも顔が真っ赤。きっと、マティス殿下が勝つと思っていたのでしょうね。

「そ、それはなぜなのか、聞いても良いですか?」

 おずおずと審判をしていた先生が聞いてきたので、こくりとうなずく。わたくしはマーセルに近付いて、彼女の手を取った。

「彼女が、本当の公爵令嬢だからです」

 しん、とパーティー会場内が静まり返った。誰もなにも言わない。ただ、わたくしたちを視線で刺すだけ。

「わたくしとマーセルは、生まれたばかりの頃に入れ替えられました。……陛下、どうしてわたくしたちを入れ替えることを、提案されたのですか?」

 話の矛先をグラエル陛下に向ける。陛下はずっと黙っていたけれど、上からわたくしたちをじろりと睨むように見下ろしていた。

「なにを言っているのか、さっぱりわからないな」

 すんなり認めるとは思わなかったので、許容範囲の答えだった。ブレンさまに視線を移すと、彼はこくりとうなずいてパチン、と扉を開ける。

 パーティー会場に入ってきたのは、老婆だった。その隣には、クロエの姿が見える。

「ばあや……」

 マティス殿下がそうつぶやいた。そう――彼女は幼い頃ずっと、マティス殿下のことを支えていた乳母だ。――でも、彼が十歳の誕生日に、突如城から追い出された。
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