【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 まさか、エセル王妃がこの場にきて証言してくれるとは思わず、じっと見つめた。すると、彼女はわたくしたちからグラエル陛下に視線を移し、「これが証拠です」と魔法石を取り出した。

「これは……?」
『確か、カースティン男爵夫妻と、ベネット公爵夫妻の子の誕生は同じくらいになりそうだったな? そして、カースティン男爵には借金がある。オリヴィエの血筋を王族に入れることができるチャンスだ』
『お、お待ちください、陛下。金貨と引き換えに子どもを入れ替えようとおっしゃるのですか?』

 グラエル陛下と……これは、お父さまの声?

『そうだ。お前のところにはすでに血の繋がった子どもがいるだろう。オリヴィエの子を公爵令嬢に仕上げてくれ。マティスの婚約者にする』
『そんな……』

 ……お父さまは、最初から知っていたの? 知っていて、ホテルのラウンジであんなふうに言っていたということ?

 血の気が引いた。……グラエル陛下、カースティン男爵、そしてお父さまが結託してわたくしたちを取り替えたの!?

『あとでカースティン男爵も連れてくる。万が一子どもたちにバレた場合のことも話し合わないとな』
『……陛下はどうして、そこまでオリヴィエ嬢の子を……?』
『愛しているからさ。愛しているから……彼女の血筋を王族に入れたい。王族としての子を産んでほしい。それだけの話だ』
『オリヴィエ嬢の子どもの性別は、生まれてみないとわかりませんよ』
『男だとしたら、娘の婚約者にするさ』
「うわー……。すごいね、この国の陛下」

 ぞわりと鳥肌が立った。そんなわたくしに、レグルスさまがぽつりと言葉をこぼす。彼の言葉は、静まり返ったパーティー会場内に、よく響いた。
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