【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「マティス殿下、憑き物が落ちた顔をしていましたねー」
「ブレンさま」
「お待たせして申し訳ありません、カミラさま、レグルスさま」
ブレンさまとクロエが姿を現した。
学園は長期休暇に入り、学生たちはそれぞれの家に帰った。残っているのは、わたくしたちと先生たちくらい。
王立レフェーブル学園。わたくしは、ここから旅立ちたいと考えていた。
「ジェマは大丈夫だった?」
「はい。今、グラエル陛下はエセル王妃にいろいろ……されているようです」
クロエが苦笑を浮かべる。いったいどんなことをされているのかはわからないけれど、エセル王妃は今回の件でわたくしとマーセルに改めて謝罪してくださったのよね。グラエル陛下はわたくしたちの入れ替わりを『なぜ悪いのだ。これが一番だったろう』と反省の色がなかったと聞いている。
陛下の考えはさっぱりとわからないわ。でも、夫のしたことだから、とエセル王妃がお詫びの金貨をくださった。
マティス殿下とマーセルからの慰謝料と、エセル王妃からいただいた金貨で、わたくし自身の財産がそこそこ潤ったのよね。この国に未練はないから、このまま国を去ろうと思ったの。
ベネット公爵家の人たちとも、カースティン男爵家の人たちとも、会っていない。
すべての決断はエセル王妃に任せた。わたくしのことは、もういないものだと思ってほしいと伝えてある。もともと公爵家の令嬢であるマーセルは、きっとこれからマティス殿下を支えていくでしょう。きっと、エセル王妃も力を貸してくれるわ。
そうそう、彼女がいったいどんな失敗をしたのかは、こっそりと教えてもらった。
お茶を淹れる授業のときに、誤って水を伯爵家の令嬢にかけてしまい、彼女の化粧がどろどろになり、それを婚約者に見られて『うわぁ』と引かれた……らしい。
そのことにショックを受けた令嬢が、腹いせとしてマーセルに嫌がらせを始めたのがきっかけみたい。そのうちにマティス殿下と親しくなって、さらに嫌がらせされるようになった。
マーセルも化粧を落としてしまった伯爵令嬢に謝って、なんとか彼女の化粧をもとに戻そうとしたけれど……結局変な化粧になってしまったらしくて、『なにもできないヤツ』になってしまったと聞いたわ。
なんというか、きっかけってそういうものよね、としか言えないわ……
「ブレンさま」
「お待たせして申し訳ありません、カミラさま、レグルスさま」
ブレンさまとクロエが姿を現した。
学園は長期休暇に入り、学生たちはそれぞれの家に帰った。残っているのは、わたくしたちと先生たちくらい。
王立レフェーブル学園。わたくしは、ここから旅立ちたいと考えていた。
「ジェマは大丈夫だった?」
「はい。今、グラエル陛下はエセル王妃にいろいろ……されているようです」
クロエが苦笑を浮かべる。いったいどんなことをされているのかはわからないけれど、エセル王妃は今回の件でわたくしとマーセルに改めて謝罪してくださったのよね。グラエル陛下はわたくしたちの入れ替わりを『なぜ悪いのだ。これが一番だったろう』と反省の色がなかったと聞いている。
陛下の考えはさっぱりとわからないわ。でも、夫のしたことだから、とエセル王妃がお詫びの金貨をくださった。
マティス殿下とマーセルからの慰謝料と、エセル王妃からいただいた金貨で、わたくし自身の財産がそこそこ潤ったのよね。この国に未練はないから、このまま国を去ろうと思ったの。
ベネット公爵家の人たちとも、カースティン男爵家の人たちとも、会っていない。
すべての決断はエセル王妃に任せた。わたくしのことは、もういないものだと思ってほしいと伝えてある。もともと公爵家の令嬢であるマーセルは、きっとこれからマティス殿下を支えていくでしょう。きっと、エセル王妃も力を貸してくれるわ。
そうそう、彼女がいったいどんな失敗をしたのかは、こっそりと教えてもらった。
お茶を淹れる授業のときに、誤って水を伯爵家の令嬢にかけてしまい、彼女の化粧がどろどろになり、それを婚約者に見られて『うわぁ』と引かれた……らしい。
そのことにショックを受けた令嬢が、腹いせとしてマーセルに嫌がらせを始めたのがきっかけみたい。そのうちにマティス殿下と親しくなって、さらに嫌がらせされるようになった。
マーセルも化粧を落としてしまった伯爵令嬢に謝って、なんとか彼女の化粧をもとに戻そうとしたけれど……結局変な化粧になってしまったらしくて、『なにもできないヤツ』になってしまったと聞いたわ。
なんというか、きっかけってそういうものよね、としか言えないわ……