【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
番外編
海辺の街で。 1話
馬車の旅はゆっくりと続いた。
レグルスさまは、わざとゆっくりリンブルグに向かっているのだと思う。
わたくしがあまりにも住んでいた国の人々と話す機会がなかったから、かしら? 今までずっと、自分のことに精一杯で……世界がこんなにきらめいて見えることはなかった。
宿屋に泊まったとき、そのことをクロエに話したら一瞬キョトンとした顔を浮かべて、彼女は優しく微笑んでわたくしの肩に手を添えて言葉を紡ぐ。
「それは、カミラさまがレグルスさまと一緒に過ごしているからではありませんか?」
「え?」
「恋をすると、世界がきらめいて見えるらしいですよ。それに、カミラさま、以前にもまして綺麗になりましたし……」
「ええっ?」
ぺたぺたと自分の顔を触ってみる。鏡は毎日見ているけれど……
「……告白はしましたか?」
ふるりと首を横に振る。学園から旅立った日に、レグルスさまから伝えられたことは、クロエに話していない。
「ずっと一緒の馬車なのに?」
「……普通にお話はするわよ?」
レグルスさまはこの国のことについて詳しかった。わたくしよりも詳しいのではないかしら? と思えるくらいに、各町のことを話していたもの。
どこから得たのかと尋ねたら、この国からの移住してきた人たちに聞いた、と教えてもらった。とはいえ、自分の目で見ると印象が違う、とも。
「そういえば、カミラさまはあまり外に出たことが……?」
「こんなふうにゆっくり見て回ることはなかったわね。レグルスさまのお話を聞いて、実際自分の目で見て、改めていろんな人が住んでいるのね、と感心したわ」
たとえば、いつも笑顔で接客してくれる宿屋の人。
たとえば、いつも声を張り上げてお土産を売っている人。
たとえば、町の広場でプロポーズをする人。
――本当に、いろいろな人たちを見た。
レグルスさまは、わざとゆっくりリンブルグに向かっているのだと思う。
わたくしがあまりにも住んでいた国の人々と話す機会がなかったから、かしら? 今までずっと、自分のことに精一杯で……世界がこんなにきらめいて見えることはなかった。
宿屋に泊まったとき、そのことをクロエに話したら一瞬キョトンとした顔を浮かべて、彼女は優しく微笑んでわたくしの肩に手を添えて言葉を紡ぐ。
「それは、カミラさまがレグルスさまと一緒に過ごしているからではありませんか?」
「え?」
「恋をすると、世界がきらめいて見えるらしいですよ。それに、カミラさま、以前にもまして綺麗になりましたし……」
「ええっ?」
ぺたぺたと自分の顔を触ってみる。鏡は毎日見ているけれど……
「……告白はしましたか?」
ふるりと首を横に振る。学園から旅立った日に、レグルスさまから伝えられたことは、クロエに話していない。
「ずっと一緒の馬車なのに?」
「……普通にお話はするわよ?」
レグルスさまはこの国のことについて詳しかった。わたくしよりも詳しいのではないかしら? と思えるくらいに、各町のことを話していたもの。
どこから得たのかと尋ねたら、この国からの移住してきた人たちに聞いた、と教えてもらった。とはいえ、自分の目で見ると印象が違う、とも。
「そういえば、カミラさまはあまり外に出たことが……?」
「こんなふうにゆっくり見て回ることはなかったわね。レグルスさまのお話を聞いて、実際自分の目で見て、改めていろんな人が住んでいるのね、と感心したわ」
たとえば、いつも笑顔で接客してくれる宿屋の人。
たとえば、いつも声を張り上げてお土産を売っている人。
たとえば、町の広場でプロポーズをする人。
――本当に、いろいろな人たちを見た。