【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
◆◆◆

「カミラ嬢、馬車の窓を見てごらん」
「……? ……まぁ!」

 馬車の旅は続いていた。

 レグルスさまに言われて窓の外に視線を向けると、とても澄んで大きな水面が見えて思わず声を上げてしまう。

「馬車から降りたら、きっと驚くよ」

 にっと白い歯を見せるレグルスさまに首をかしげた。でも、馬車から降りてすぐにその理由がわかったわ。

「――独特の香りがしますのね」

「潮の香りだからね。馬車の旅は終わり。今日からは船旅になるけれど……船酔いしないかな?」
「……わかりませんわ。ボートに乗ったときは酔ったことありませんけれど……」

 湖でボートに乗ったことはあるけれど、……こんなに大きい船に乗るのは初めてで、なんだかワクワクとドキドキが混ざって変な感じがする。

「豪華客船って感じですね」
「一応リンブルグの王太子だからね、俺。手配したのはブレンだけど」
「いやー、思ったよりも大きな船がきましたねー」

 ブレンさまが船を見上げてぽつりとつぶやいた。どうやら、もう少し小さい船が迎えに来ると思っていたようだ。

 でも、レグルスさまはリンブルグの王太子なのだから、このくらい大きな船が迎えにきてもおかしくはない……と思うわ。

「もしも具合が悪くなったらおっしゃってくださいね」

 ぐっと拳を握ってわたくしを見るクロエ。こくりとうなずくと、満足そうに微笑んだ。
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