【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 これからのことを考えていると、扉がノックされた。誰かしらとベッドから起き上がって、「どなた?」と(たず)ねると、「レグルスだ」と返事が。

 どうしてレグルスさまがここに? と思いながらも、扉を開ける。彼は真っ白なバラの花束を持って微笑んだ。

「白バラ……?」
「ああ。レディは花が好きかと思って」
「……ふふ」

 差し出された白バラの花束を受け取って、わたくしはそっと花弁に顔を近付けて匂いを吸った。甘いバラの香りに表情を緩ませると、レグルスさまに向けて頭を下げる。

「ありがとうございます、レグルスさま。……もしかして、この花束を渡すために?」
「あー……それもあるんだが、うん、ちょっとしたデートのお誘いさ」
「えっ?」

 思わず目を丸くする。デートのお誘い……? わたくしが困惑していると、彼はただ優しく目元を細めて手を差し出した。

「残念ながら、二人きりというわけではないけどな」
「どなたとご一緒ですの?」
「俺ときみ、クロエと傭兵学科からもうひとり」

 傭兵学科から……? と目を(またた)かせた。「少々お待ちになって」と一言声をかけてから、わたくしは部屋に置いてある花瓶を取り出して、ナイトテーブルの上に置く。

 魔法を使って花瓶に水を注ぐと、いただいた花束の包装を取り、風魔法を使って少しだけ切ってからそっと花瓶に入れた。

 花があるだけで、殺風景だった場所が温かみのある場所になったような気がするわ。

「お待たせしました。どちらに向かわれるのですか?」
「今日と明日は休日だろう? 王都を見て回ろうと思ってね」
「王都を?」
「ホテルはもう取ってあるんだ。事後承諾でごめん。クロエと同じ部屋にしたから」
「傭兵学科の方は男性ですの?」
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