【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「それでは、王都へ向かいましょう」

 パンパンとクロエが両手を叩いてわたくしたちを馬車に乗せる。

 彼女は、こんなにわたくしと一緒にいて大丈夫なのかしら? と疑問を抱いたけれど、全員馬車に乗って動き出してから、クロエは口を開いた。

「できるだけ、マーセルさまの(そば)にいるように、との殿下の指示です」

 と、わたくしの疑問を感じ取ったのか、教えてくれた。

 昨日、わたくしがショックを受けていたから、彼女にそう指示をしたのかもしれないわね。

 その優しさはすべてマーセルに向けているものだ。

「……それにしても、本当に面白いですね」
「え?」
「中身と外見がちぐはぐな人には、初めてお会いしました」

 わたくしは目を(またた)かせた。ブレンさまも、わたくしが『マーセル』ではないことに気付いているのだとしたら……リンブルグの人はかなり勘が良いということ?

 それとも、彼らにはなにかが()えているのかしら?

 二人を興味深そうに眺めると、ブレンさまはにこにこと微笑んでいた。
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