【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「おいしい……」
「薄いのにふわふわしているんですね。ホイップクリームも軽いですし、思ったよりも食べられそうです」

 わたくしもクロエに同意した。

 こんなに美味しいパンケーキを初めて食べたわ。

 パンケーキ自体は、公爵家でもたまに出ていたけれど、こんなにたっぷりのホイップではなかったから。

 ブレンさまのほうを見ると、にこにこと幸せそうに食べていた。ものすごく、幸せそうに……本当に食べるのが好きなのね。

 ちらりとレグルスさまを見てみると、彼もぱくぱくときれいに食べていた。

 お食事系というだけあって、サラダや厚切りのベーコン、目玉焼きが乗っていた。今度、機会があればそちらも試してみたいわ。

 美味しいものを満足するまで食べて、紅茶で口の中をさっぱりとさせてからお店をあとにした。

 代金を支払おうとしたのだけど、先に「デートだから」とレグルスさまに止められた。ブレンさまもレグルスさまと同じ考えのようで、うんうんとうなずいている。

 わたくしとクロエは視線を()わして、「ごちそうさまでした」とふたりに頭を下げた。

 男性に(おご)ってもらうなんて、初めてのことでなんだか不思議な気持ち。

 お店を出て、「他の店も見てみよう」と誘われて、わたくしたちはうなずいた。王都にはいろんなお店があるのね、と改めて感じた。

 そういえば、わたくし……王都をこんなふうに見て回るの、初めてかもしれない。

 もちろん、王都を通ることはあったけれど、自由に見て回ることはできなかったから。
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