【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 あまりにも否定されることに、疲れてしまったのよね。

「……申し訳ありません。わたくし……わかりません……」

 うつむいてそう言葉を紡げば、クロエがわたくしの肩を抱いた。

 レグルスさまは「それじゃあ」と声を出して、わざわざ屈んで視線を合わせて優しく微笑み、口を開く。

「ゆっくりと、好きなものを探していけばいい」

 耳心地の良い言葉が、鼓膜を揺らす。目を(またた)かせると、レグルスさまは目元を細めてわたくしを見つめた。

 ……そう、そういう考え方も、できるのね。

 きゅっと自分の手を絡めて握り、こくりとうなずいた。

 自分の好みを探すことができるのが、うれしい。諦めていたことだから。

「ありがとうございます。好みのものを、探してみます」
「うん。好みのものが見つかったら教えてくれ。アクセサリーとか身につけるものだとなお嬉しい」

 アクセサリー? と首をかしげると、ブレンさまが補足をしてくれた。

「リンブルグでは求婚のときにアクセサリーをプレゼントするんです。好みに合わなかったら、残念な感じでしょう?」
「こら、ブレン。ネタバラシが早すぎる」

 ブレンさまに注意するレグルスさま。でも、ブレンさまはレグルスさまをからかうように笑っている。……このふたりの関係も謎よね。主君と護衛というよりは、気の置ける友人のように見えるから。

 その関係性に羨ましさを感じて、わたくしは小さく息を吐いた。
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