【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

早速ノートを使いましょう。

 寮のマーセルの部屋まで、クロエが送ってくれた。さすがに門限ギリギリだから、最後までエスコートをしようとしてくれたレグルスさまたちを、男子寮に帰した。

 残念そうだったけれど……代わりにクロエが念のため、とわたくしと女子寮を歩いてくれた。クロエの部屋も寮にあるみたい。

 学生寮ではなく、教師寮らしい。確かもうひとり、マティス殿下の担当医は彼の部屋の近くにいたはず。

 部屋に入って椅子に座り、ノートを閉じて誰にも見られないように魔法をかける。ああ、そうだ。マーセルのテキストやノートにも魔法をかけておこう。汚れないように。

 せっかくレグルスさまがきれいにしてくれたのだもの。大事に扱わなくちゃ。

「……やることがたくさんあるわね」

 一ヶ月後のパーティー。おそらく、マティス殿下はマーセルをエスコートするだろう。

 その前にわたくしとマーセルの身体をもとに戻さないと。……マーセルは、ちゃんと調べてくれるかしらね。

 そもそも彼女、本当にどうして魔法が使えなくなったのかしら?

 わたくしの身体になっても魔法が使えないということは、きっとマーセルの魂そのものになにかしらのロックがかかったと思うのよ。

 魔術学科では、魔法の使い方やその在り方を教わっていたから、それを思い出してみる。

『魔法の質は魂によって変化します。良いですか、魂の質とは己の矜持。それぞれ魔法が使えることを誇り、上を目指しなさい』

 参考になるような、ならないような。

 そもそも、魂の質とは?

 大魔法使いの生まれ変わりの魂なら、かなり質が良いということ?

 専門家ではないから、よくわからないわ……。生活魔法は誰でも使えるし、攻撃魔法だって練習すれば使えるようになる。

 唯一、光属性の魔法だけは素質がなければ使えないらしい。
< 93 / 232 >

この作品をシェア

pagetop