〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
車を駐車したパーキングの前で九条と合流する。額に汗を浮かべる九条は車内に戻るとすぐさまネクタイをほどいて、ワイシャツの襟元のボタンを二つ開けた。
『18時頃に表参道ヒルズで栞里っぽい服の女を見かけたって証言があった。けど流行りの服装らしいし、そんな女は表参道にゴロゴロいるからな』
栞里のインスタグラムには服装を写した全身写真が26日に投稿されている。失踪当日の栞里の服装はフリルがついたモノトーンチェックのノースリーブトップスと白色のチノパンツ、赤いサンダル。
美容やファッションを専門としたSNSアカウントを所有するインフルエンサーは今日のコーディネートや今日のメイクと題して、洋服の写真やメイクをした自分の顔写真の投稿を頻繁に行っている。美夜には理解し難い世界だ。
「栞里は夕食を外で食べてくると母親に連絡していたのよね。美容院の後に誰かと待ち合わせていたのかも」
『外食相手の可能性が高いのは恋人か友達? 大学の方に行ってる主任と杉さんからは、栞里の交際相手の報告は来てないな』
「担当美容師の話では好きな男はいたそうよ。栞里の友達に聞けば男の情報も出るかな」
『待ち合わせの相手が栞里の好きな奴だったとしても、そいつが栞里を殺して写真を載せるって腑に落ちねぇ。わざわざ自分の犯罪を見せびらかしてるみたいな……』
ふと視線を横にずらした九条は助手席の美夜の変化に気付いた。
『髪何かしてもらった? 毛先くるくるしてる』
「前髪が伸びて鬱陶しかったから栞里を担当していた美容師に切ってもらって、遠慮したんだけど毛先も巻いてくれたのよ。感じの良い美容師だった」
美夜のセミロングの髪は耳の横から毛先にかけてゆるくウェーブがかっている。カールが取れないようにつけてもらったヘアオイルの花の匂いが微かに香った。
カラーリングの経験がない美夜の漆黒の髪を理世は褒め称えていた。
茶髪が似合う人もいれば黒髪が似合う人もいる。皆が同じ髪型、同じ髪色にしなくてもいいのだと、強引に染髪を勧められることもなかった。
『そうしてると今時の女に見える。表参道カリスマ美容師の技?』
「普段は今時の女になれてなくて悪かったね」
パーキングを這い出た車が炎天下の街をのろのろと走行する。ようやく車内に効いてきたクーラーの冷気が美夜の毛先にふわりと触れた。
「……男って髪巻いてる女が好き?」
『好みは人によるだろ。俺は普段ストレートな髪の女が巻いたり違う髪型してると、ギャップがあってドキッとはする』
「そういうものなのね」
愁と会う日は髪を巻いた方がいいのだろうか。そもそも愁はどんな女が好み?
こんなことを考えている自分の心が、最も厄介で面倒くさかった。
『18時頃に表参道ヒルズで栞里っぽい服の女を見かけたって証言があった。けど流行りの服装らしいし、そんな女は表参道にゴロゴロいるからな』
栞里のインスタグラムには服装を写した全身写真が26日に投稿されている。失踪当日の栞里の服装はフリルがついたモノトーンチェックのノースリーブトップスと白色のチノパンツ、赤いサンダル。
美容やファッションを専門としたSNSアカウントを所有するインフルエンサーは今日のコーディネートや今日のメイクと題して、洋服の写真やメイクをした自分の顔写真の投稿を頻繁に行っている。美夜には理解し難い世界だ。
「栞里は夕食を外で食べてくると母親に連絡していたのよね。美容院の後に誰かと待ち合わせていたのかも」
『外食相手の可能性が高いのは恋人か友達? 大学の方に行ってる主任と杉さんからは、栞里の交際相手の報告は来てないな』
「担当美容師の話では好きな男はいたそうよ。栞里の友達に聞けば男の情報も出るかな」
『待ち合わせの相手が栞里の好きな奴だったとしても、そいつが栞里を殺して写真を載せるって腑に落ちねぇ。わざわざ自分の犯罪を見せびらかしてるみたいな……』
ふと視線を横にずらした九条は助手席の美夜の変化に気付いた。
『髪何かしてもらった? 毛先くるくるしてる』
「前髪が伸びて鬱陶しかったから栞里を担当していた美容師に切ってもらって、遠慮したんだけど毛先も巻いてくれたのよ。感じの良い美容師だった」
美夜のセミロングの髪は耳の横から毛先にかけてゆるくウェーブがかっている。カールが取れないようにつけてもらったヘアオイルの花の匂いが微かに香った。
カラーリングの経験がない美夜の漆黒の髪を理世は褒め称えていた。
茶髪が似合う人もいれば黒髪が似合う人もいる。皆が同じ髪型、同じ髪色にしなくてもいいのだと、強引に染髪を勧められることもなかった。
『そうしてると今時の女に見える。表参道カリスマ美容師の技?』
「普段は今時の女になれてなくて悪かったね」
パーキングを這い出た車が炎天下の街をのろのろと走行する。ようやく車内に効いてきたクーラーの冷気が美夜の毛先にふわりと触れた。
「……男って髪巻いてる女が好き?」
『好みは人によるだろ。俺は普段ストレートな髪の女が巻いたり違う髪型してると、ギャップがあってドキッとはする』
「そういうものなのね」
愁と会う日は髪を巻いた方がいいのだろうか。そもそも愁はどんな女が好み?
こんなことを考えている自分の心が、最も厄介で面倒くさかった。