〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
 鬱々としかけた精神を取り戻そうと、彼女は自分のツイッターに画面を切り替える。タイムラインに並ぶフォロワーのツイートをスクロールして追っていくと、あるフォロワーのツイートに自分の名前を見つけた。


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この前の飲み会の時ゆみちゃんのお肌がツルツル過ぎてびっくり。
あの時はファンデもつけてないって言ってた。
どうしたらあんなに綺麗なお肌になれるのかなー
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 このツイートをしたフォロワーとは、同じロックバンドのファン同士。ライブの後のファン同士が集まる飲み会で親睦を深めている。

 顔が可愛い、スタイルが良いとは生まれてこのかた一度も称賛されたことがない祐実も、肌だけは褒められる。
特にトラブルのない強い肌は遺伝のおかげだ。

太っていても美人じゃなくても結婚はできる。夫の彰良は、ありのままの自分を受け入れてくれた人。

 二十六歳で初めて出来た彼氏との結婚。この恋愛は正しく、純愛だ。
最後に勝つのは外見よりも中身。性格の悪い“元カノ”よりも自分が選ばれた。その事実が祐実の優越感と自尊心をどうにか保っていた。

(私は“正しい”恋愛をしただけ。私は悪くない)

 休憩時間の暇潰しに、裕実はスマートフォンの画面上に並ぶアプリから黒くて四角いアプリをタップした。

agent《エイジェント》と呼ばれるR17指定のゲームアプリは、作成した自分のアバターを使ってバーチャル空間で相手を倒す悪役体験型のクライムアクションゲーム。これが良いストレス発散になる。

 ゲームを有利に進めるために必要なアイテムにはその都度、課金しなければならない。けれどゲームに課金した八万円も十万の“依頼料“も惜しくはなかった。

あの女はもうすぐ死ぬ。そうすればやっと解放される。

 嫌いな女に似せて作った相手のアバターの腹にナイフを突き刺した裕実の顔には、穏やかな微笑が浮かんでいた。
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