〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
藍川と深井、理世を想っていた男が二人いたのに理世は幸せになれたかもしれない未来を自ら手放してしまった。
『店開けたらまたおいで。彼氏くんもよければ愛佳ちゃんと一緒に店に来てね。サービスするよ』
疲弊の微笑を見せる藍川に伶は軽く頭を下げた。
香乃達と別れた愛佳と伶は二階に上がり、最後の展示室に入室する。凛とした厳《おごそ》かな雰囲気の冬の庭の花は赤い椿。
氷を模した水槽に赤と黒の金魚が散っていた。
『さっきの人達って例の看護師殺人の?』
「そうだよ。美容室の店長の藍川さんと、理世さんの友達のネイリストの香乃さん。いつも私のネイルを担当してくれるのも香乃さんなの」
理世に染めてもらった日のヘアカラーの投稿と香乃がアートをしてくれたネイルの投稿はフォロワーの反応が特に良く、インスタのコメント欄も理世や香乃の技術とセンスへの賛辞の言葉が飛び交う人気ぶりだった。
「最近、インスタ友達の栞里ちゃんって子も理由はわからないけど殺されちゃったみたいなの。栞里ちゃんもお店の常連だったから藍川さんや香乃さんも二重のショックなんだよね」
『女の子が殺されるなんて物騒だよな。愛佳も夜道は気をつけろよ』
「うん」
冬の庭を半周した時、館内放送が入った。
{──14時より、一階ロビーにて当館のアートプロデュースに携わった華道家、雨宮蘭子のフラワーデモンストレーションが始まります。ご来場の皆様は……}
「雨宮蘭子ってここに飾ってあるお花をプロデュースした人だ。職業のフラワーアーティストって華道とは違うの?」
『結婚式やイベント会場で花を生ける仕事だよ』
客の流れが逆流している。皆、デモンストレーションを見るために一階ロビーに向かうようだ。
人の波ではぐれないように伶と手を繋いだ愛佳は、片手に持つリーフレットに掲載された雨宮蘭子の顔写真を凝視する。
「リーフレットに載ってる雨宮蘭子さんの写真、伶くんに少し似てる……」
『そう?』
「うん。顔の系統って言うか、女優みたいに物凄い美人。でも雨宮さんは伶くんよりも舞ちゃんに似てるかも。……ごめん、気のせいだね」
『きっと気のせいだよ。デモンストレーション始まるよ。ロビーに行こう』
優しい笑顔を見せる伶の瞳が、一瞬だけ冷たい光を宿しているように見えた。
『店開けたらまたおいで。彼氏くんもよければ愛佳ちゃんと一緒に店に来てね。サービスするよ』
疲弊の微笑を見せる藍川に伶は軽く頭を下げた。
香乃達と別れた愛佳と伶は二階に上がり、最後の展示室に入室する。凛とした厳《おごそ》かな雰囲気の冬の庭の花は赤い椿。
氷を模した水槽に赤と黒の金魚が散っていた。
『さっきの人達って例の看護師殺人の?』
「そうだよ。美容室の店長の藍川さんと、理世さんの友達のネイリストの香乃さん。いつも私のネイルを担当してくれるのも香乃さんなの」
理世に染めてもらった日のヘアカラーの投稿と香乃がアートをしてくれたネイルの投稿はフォロワーの反応が特に良く、インスタのコメント欄も理世や香乃の技術とセンスへの賛辞の言葉が飛び交う人気ぶりだった。
「最近、インスタ友達の栞里ちゃんって子も理由はわからないけど殺されちゃったみたいなの。栞里ちゃんもお店の常連だったから藍川さんや香乃さんも二重のショックなんだよね」
『女の子が殺されるなんて物騒だよな。愛佳も夜道は気をつけろよ』
「うん」
冬の庭を半周した時、館内放送が入った。
{──14時より、一階ロビーにて当館のアートプロデュースに携わった華道家、雨宮蘭子のフラワーデモンストレーションが始まります。ご来場の皆様は……}
「雨宮蘭子ってここに飾ってあるお花をプロデュースした人だ。職業のフラワーアーティストって華道とは違うの?」
『結婚式やイベント会場で花を生ける仕事だよ』
客の流れが逆流している。皆、デモンストレーションを見るために一階ロビーに向かうようだ。
人の波ではぐれないように伶と手を繋いだ愛佳は、片手に持つリーフレットに掲載された雨宮蘭子の顔写真を凝視する。
「リーフレットに載ってる雨宮蘭子さんの写真、伶くんに少し似てる……」
『そう?』
「うん。顔の系統って言うか、女優みたいに物凄い美人。でも雨宮さんは伶くんよりも舞ちゃんに似てるかも。……ごめん、気のせいだね」
『きっと気のせいだよ。デモンストレーション始まるよ。ロビーに行こう』
優しい笑顔を見せる伶の瞳が、一瞬だけ冷たい光を宿しているように見えた。