〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
娯楽とは大概、外側にいる人間には理解ができないものだ。フルリールの楽曲もアイドルソングを好まない人間からすれば耳障りな女の合唱でも、それを好む内側の人間にとっては時には生き甲斐にもなる。
今度は真紀が質問に回る。
「莉愛には彼氏がいたという話もありました。私達の調べでは彼女と交際していた男の手がかりは得られなかったんですが、莉愛の彼氏はリベンジポルノを流した瀬田や伊吹ではないことは確かですよね」
『莉愛に男がいたのは事実だ。でもフルリールのメンバーでファンと繋がっていたのは別の人間。そいつが自分の男達を使って莉愛の集団レイプとリベンジポルノを仕組んだ主犯だろう』
瀬田がバイトしていた蒲田駅前のカラオケ店に莉愛が行くように仕向けた人間がいる。おそらく瀬田、増山、大和と繋がっていたフルリールのメンバーの誰かだ。
莉愛も身の危険は感じていたはず。行かない方がいいとわかっていても、莉愛は彼らが待つカラオケ店に行ってしまった。
誰かに脅されていたから? 莉愛はどんな秘密を抱えて、何を守ろうとしていた?
美夜を先に車に戻らせ、真紀と桑田はまだ台座に腰掛けていた。
『瀬田と増山が死んだとなると次に狙われるのはあの弁護士の息子か?』
「その線が濃厚です。次の被害を出さないためにも伊吹大和には警護を申し出ましたが、あっさり断られました。警察が側にいたら鬱陶しいとか何とか……」
『警察の義務と個人的感情の狭間でお嬢ちゃんも大変だな』
「警察としてはこれ以上の被害は食い止めたいので。個人的感情を言えば、伊吹大和の警護なんてまっぴらごめんですよ」
伊吹大和が集団強姦の犯人だとしても守られるべき命。警察の立場では彼を保護し、守る義務がある。
けれど警察を離れた個人の立場となれば話は別だ。あんな卑劣な男、守りたくもない。
警察組織にいる誰もが桜田門の正義と個人の感情の狭間で揺れ動いている。
『そういえば莉愛のマンションを張ってる時、マンションの近くのコンビニで買い物してた俺に莉愛から話しかけてきたんだ』
「莉愛が桑田さんに?」
『ああ。俺の30年の記者生活で向こうから話しかけてきた芸能人なんて初めてで驚いた。しかも、ありがとうございますと礼を言われた』
五個入りのミニドーナッツのひとつを摘まんだ真紀はそれを口に放り込む。咀嚼しながら彼女は、コンビニでアイドルが週刊誌の記者に礼を言う様子を想像してみた。異様な光景だ。
「なんでお礼を?」
『側で私を見ててくれる人がいるから帰り道も怖くないんです……ってさ。あれは俺みたいな記者とは違う種類の人間につけ回されていたんだろう』
「……それはいつの話ですか?」
『莉愛のリベンジポルノが出る前。雪の予報が出ていた日だから今年の1月だな』
帰り道を不安に思う出来事となると、悪質なファンのつきまとい行為がまず挙げられる。
今度は真紀が質問に回る。
「莉愛には彼氏がいたという話もありました。私達の調べでは彼女と交際していた男の手がかりは得られなかったんですが、莉愛の彼氏はリベンジポルノを流した瀬田や伊吹ではないことは確かですよね」
『莉愛に男がいたのは事実だ。でもフルリールのメンバーでファンと繋がっていたのは別の人間。そいつが自分の男達を使って莉愛の集団レイプとリベンジポルノを仕組んだ主犯だろう』
瀬田がバイトしていた蒲田駅前のカラオケ店に莉愛が行くように仕向けた人間がいる。おそらく瀬田、増山、大和と繋がっていたフルリールのメンバーの誰かだ。
莉愛も身の危険は感じていたはず。行かない方がいいとわかっていても、莉愛は彼らが待つカラオケ店に行ってしまった。
誰かに脅されていたから? 莉愛はどんな秘密を抱えて、何を守ろうとしていた?
美夜を先に車に戻らせ、真紀と桑田はまだ台座に腰掛けていた。
『瀬田と増山が死んだとなると次に狙われるのはあの弁護士の息子か?』
「その線が濃厚です。次の被害を出さないためにも伊吹大和には警護を申し出ましたが、あっさり断られました。警察が側にいたら鬱陶しいとか何とか……」
『警察の義務と個人的感情の狭間でお嬢ちゃんも大変だな』
「警察としてはこれ以上の被害は食い止めたいので。個人的感情を言えば、伊吹大和の警護なんてまっぴらごめんですよ」
伊吹大和が集団強姦の犯人だとしても守られるべき命。警察の立場では彼を保護し、守る義務がある。
けれど警察を離れた個人の立場となれば話は別だ。あんな卑劣な男、守りたくもない。
警察組織にいる誰もが桜田門の正義と個人の感情の狭間で揺れ動いている。
『そういえば莉愛のマンションを張ってる時、マンションの近くのコンビニで買い物してた俺に莉愛から話しかけてきたんだ』
「莉愛が桑田さんに?」
『ああ。俺の30年の記者生活で向こうから話しかけてきた芸能人なんて初めてで驚いた。しかも、ありがとうございますと礼を言われた』
五個入りのミニドーナッツのひとつを摘まんだ真紀はそれを口に放り込む。咀嚼しながら彼女は、コンビニでアイドルが週刊誌の記者に礼を言う様子を想像してみた。異様な光景だ。
「なんでお礼を?」
『側で私を見ててくれる人がいるから帰り道も怖くないんです……ってさ。あれは俺みたいな記者とは違う種類の人間につけ回されていたんだろう』
「……それはいつの話ですか?」
『莉愛のリベンジポルノが出る前。雪の予報が出ていた日だから今年の1月だな』
帰り道を不安に思う出来事となると、悪質なファンのつきまとい行為がまず挙げられる。