〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
フルリールの所属事務所は、大手芸能事務所に比べれば質素な外観の雑居ビルに入っている。応接室に通された神田美夜と九条大河は、待ち人が来るまで手持ち無沙汰に時間を浪費していた。
廊下や応接室の壁のあちらこちらにフルリールのポスターが貼り付けられている。
所属タレントで最も売れているのがフルリールと人気AV女優の野々宮マホロということもあって、応接室にはフルリールと野々宮マホロの写真集、テレビの側にはマホロのDVDやフルリールのライブDVDまで置いてあった。
『このテレビで野々宮マホロの作品でも観て待っていてくださいね、ってことか?』
「見たいなら観ていいけど、九条くんも男なのね」
『違うぞ。決してそんなやらしい目的ではなくてだな、暇だからちょっと手に取ってみただけだ』
九条は赤面しながら言い訳を述べ、主婦に扮した野々宮マホロがカバーのDVDをラックに戻した。その隣にはフルリールの2017年のライブDVDがぽつんと立っている。
「ねぇ、野々宮マホロのDVD観てみない?」
『正気? AVを一緒に観るってどんな拷問だよ。それだけは勘弁して』
「お願い。確かめたいことがある」
九条はまだ何か言いたげに口元を歪めつつ、野々宮マホロのDVDをデッキにセットした。
音量設定をゼロにした無音の画面がテレビを流れていく。冒頭からの日常シーンはどうでもよく、美夜はマホロと男優の行為シーンまで一気に映像を飛ばした。
彼女は無音のAVが流れるテレビ画面に食い入った。野々宮マホロの裸体が大画面のテレビに映るたびに九条はチラチラとこちらの様子を気にしていたが、今は九条の気まずさを気にかける余裕はない。
『あのさ、大丈夫? 何も言わねぇけど……』
「この撮影ってカメラマンが撮ってるよね?」
『それはそうだろ。女優と男優がいちゃつくシーンは本人達では撮れない』
確認はできた。もう映像は必要ない。美夜の手がリモコンの停止ボタンを押してDVDの再生を停止すると、画面から裸の女が消えた。
『……やっと終わった。まじ拷問だぞ』
「気まずい思いさせてごめん」
『いいけどさ……。野々宮マホロは俺の趣味じゃねぇから……まぁその、一応、平気だから』
「平気って何が?」
『神田の珍しい天然ボケに今は救われる』
同僚と捜査の一貫でAVを鑑賞することの何がそんなに拷問なのだろう。全くもって男は不可解だ。
廊下や応接室の壁のあちらこちらにフルリールのポスターが貼り付けられている。
所属タレントで最も売れているのがフルリールと人気AV女優の野々宮マホロということもあって、応接室にはフルリールと野々宮マホロの写真集、テレビの側にはマホロのDVDやフルリールのライブDVDまで置いてあった。
『このテレビで野々宮マホロの作品でも観て待っていてくださいね、ってことか?』
「見たいなら観ていいけど、九条くんも男なのね」
『違うぞ。決してそんなやらしい目的ではなくてだな、暇だからちょっと手に取ってみただけだ』
九条は赤面しながら言い訳を述べ、主婦に扮した野々宮マホロがカバーのDVDをラックに戻した。その隣にはフルリールの2017年のライブDVDがぽつんと立っている。
「ねぇ、野々宮マホロのDVD観てみない?」
『正気? AVを一緒に観るってどんな拷問だよ。それだけは勘弁して』
「お願い。確かめたいことがある」
九条はまだ何か言いたげに口元を歪めつつ、野々宮マホロのDVDをデッキにセットした。
音量設定をゼロにした無音の画面がテレビを流れていく。冒頭からの日常シーンはどうでもよく、美夜はマホロと男優の行為シーンまで一気に映像を飛ばした。
彼女は無音のAVが流れるテレビ画面に食い入った。野々宮マホロの裸体が大画面のテレビに映るたびに九条はチラチラとこちらの様子を気にしていたが、今は九条の気まずさを気にかける余裕はない。
『あのさ、大丈夫? 何も言わねぇけど……』
「この撮影ってカメラマンが撮ってるよね?」
『それはそうだろ。女優と男優がいちゃつくシーンは本人達では撮れない』
確認はできた。もう映像は必要ない。美夜の手がリモコンの停止ボタンを押してDVDの再生を停止すると、画面から裸の女が消えた。
『……やっと終わった。まじ拷問だぞ』
「気まずい思いさせてごめん」
『いいけどさ……。野々宮マホロは俺の趣味じゃねぇから……まぁその、一応、平気だから』
「平気って何が?」
『神田の珍しい天然ボケに今は救われる』
同僚と捜査の一貫でAVを鑑賞することの何がそんなに拷問なのだろう。全くもって男は不可解だ。