〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
「莉愛があの動画を撮られる前日、莉愛に伝えてってリーダーの優奈に伝言を頼まれたんです。優奈から言われた通りの時間と場所を私は莉愛に伝えました。来なかったからどうなるか、わかってるよね? って言えば来るからって」
『どうなるかってどういう意味?』

 九条の問いに咲希はかぶりを振った。

「わかりません。だけど優奈が伝言を言う時、“莉愛は友達のあんたにも言えないことがあるの”って言っていたんです。それがずっと引っ掛かっていて」
「莉愛さんに隠し事をされてると感じたことはある?」
「そう言われるとあるような、ないような……。友達でも言えないこともありますよね。言いたくないことも。でも莉愛が私に隠していることを、優奈は知っていたんです」

咲希を使って莉愛を蒲田のカラオケ店に誘い出したのは、リーダーの小柴優奈だった。

「優奈達に私がいじめられるから、莉愛はいつも私を庇ってくれました。私より年下なのにしっかりしていて、誰よりも努力家な莉愛が大好きだった。今も莉愛に会いたい。私が優奈に逆らえずにあんな伝言伝えたから……」

 泣きじゃくる咲希の肩を国本マネージャーが抱いてなだめている。
ファンと繋がっていたのは望月莉愛でも高倉咲希でもなく、小柴優奈。伊吹大和のマンションで莉愛が強姦される様子を撮影したのも優奈に違いない。

 世間の噂はあてにならない。咲希も被害者側だと指摘した記者の桑田の読み通りだ。

「次は私の番かもしれないの。いつ莉愛と同じ目に遭わされるかわからなくて毎日怖くて、莉愛をレイプした奴らが死んだって聞いてホッとしちゃったんです。……ごめんなさい」
『いいんだよ。怖かったよね。君のことは俺達が守るから大丈夫』

 応接室のキャビネットにあったティッシュ箱を掴んだ九条が、ティッシュを咲希に差し出した。大粒の涙を流す咲希はしばらく話せる状態にはならず、咲希が泣き止むのを待って再び聴取が再開する。

「瀬田と増山が殺された件で優奈さんは何か言っていた?」
「それが何も言わなくて……。優奈にとっては、ファンも道具なんです。最近は新しくできた彼氏に夢中みたいで、自分と繋がっているファンが死んでも気にもしていないと思います」
『社長さんは、莉愛さんが仲間に陥《おとしい》れられたことをご存知でしたよね。その件を突っ込んでも上手く誤魔化されましたが』

九条の視線が国本に向く。咲希と国本の到着前にこの事務所の社長とも面会したが、時代遅れのチンピラのような風体の社長は、当初は咲希への聴取も渋っていた。

『うちの看板は見ての通りフルリールです。社長はこれ以上のスキャンダルを表に出したくないんですよ。リベンジポルノの示談金を受け取っている手前、事を荒立てたくないようで……僕が抗議しても社長は聞く耳を持ちません。面目ないです』

 社長からは咲希以外のメンバーへの聴取は断られた。莉愛を強姦した増山と瀬田が殺された現状では、望月莉愛に近しい人間が復讐の闇を抱えて彼らを裁いている可能性が高い。
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