夢が醒めてもずっと一緒に

呪いの記憶

 外から蝉の声が鳴り出す時期にはいつもあの記憶を思い出してしまう。一昨年の夏のことだった。



 電車のホームに立っていたら背中をツンとされた。すると

「おー、美春早えーな。いつもこの時間?」

声を聞くだけでも誰か分かった。だって私の好きな人だから。後ろを振り向いたら、やっぱり幼馴染の陸がいた。

「いつもこの時間だよ。」

私はにやけないように必死ながら、しっかりと返答をした。好きな人に朝から会えるのは幸せなことだから。そして今日、私は陸に告白する予定だ。計画としては、帰りのホームルームの後教室に残ってもらって、私の思いを伝える。

 学校に着くと朝から心臓がばくばくしていた。緊張しながら1日を過ごしてついにその時が来た。陸は、こちらをみながら

「美春。言いたいことがあるってなんだ?」

彼は、顔にはてなを浮かべている。今から告白されるなんて思いもしていないだろう。私なら大丈夫と、思って口を開いたその時。

「あー、告白とかならやめてね。」

私は思わず「え、」と溢してしまった。

「俺幼馴染は恋愛対象外だし、てか俺彼女いるしさ。」

私は崩れ落ちた。陸は彼女が出来たなど一言も言ってなかったのに。どうして。そして私は陸の言葉を遮るようにしていった。

「私陸の事が好きなの。付き合ってお願い。」

陸は少しめんどくさそうな顔をしていた。

「さっきの話聞いてなかったのか?俺彼女いるんよ。付き合ってって言われても無理。ごめんねー。」
と適当に返事をしたら陸は教室を出て行ってしまった。

追いかけることは出来なかったし、涙が溢れて止まらなかった。私の初恋は一瞬にして水の泡として消えてしまった。窓の外を見ると仲良く彼女と手を繋ぎながら校門を出る陸の姿があった。

 私はやっと涙が止まったから帰ろうとカバンを持った。そして家に着いたら自分の部屋に入り、ベッドで再び泣いた。さっき泣いたとは思えないくらい、涙が溢れた。自分でも怖いくらいに。悲しさと同時に怖さも覚えた。明日学校に行ったら、陸が全てをバラしているかもしれない。そう思うと学校に行きたくなくなった。

 どんなに苦しい日にも次の日が来てしまう。学校に行きたくなかったが、「失恋したから学校休みます。」なんて、口が裂けても言えなかった。そして着いてしまった。そう学校に。勇気を出して教室に入ると、思った通りの光景になっていた。陸が大声で話していたのだ。

「昨日さ、急に幼馴染に告白されてさー。俺彼女いるのに笑」
「えー、やば。」

笑いながら昨日の話をしていた。周りの女子たちからは、

「幼馴染って宮野さんのことだよね?」
「そうそう。静かそうなのに意外と恋愛積極的だね。」

ヒソヒソと噂されているのが聞こえる。私は教室にいるのが嫌になって教室を飛び出した。

この出来事から恋…男の子が怖くなってしまった。



今は高校生になって、陸とは別々の学校に通っている。友達からは「昔の事なんて忘れな。」って言われたけどそう簡単には忘れられなかった。それほど私にとっては大きな傷となってしまったから。
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