今夜はきっと眠れない



 部長が選んだのは上品な居酒屋だった。予約してあったらしく、個室に案内される。個室といっても通路とはのれんで仕切られているだけで、ドアはない。

「よく来るお店なんですか?」
「たまにね」

 部長のおすすめを聞き、注文をする。
 届いたビールとサワーで乾杯をした。


 
 部長とは話が盛り上がり、楽しいひとときとなった。
 話しても話しても話は尽きなくて、このまま時間が止まってほしいと何度も思った。

 途中でお手洗いにたったときも夢見心地だった。

 席に帰る途中、ほどよい酔いも手伝って、イタズラ心が芽生えた。
 こっそり近づいて、部長を驚かせよう。

 私はそーっと個室に近づき、のれんの陰から部長の様子を窺う。
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