今夜はきっと眠れない
 もぞもぞとおしぼりをさわっていると、部長がぼそっと言った。

「さっき、聞こえてーー」
「聞いてません」

 かぶせるように言ってしまった。これではむしろ、聞いたと言ってるようなものだ。

 部長は片手で顔を覆ってうつむいた。その耳が赤い。

 あれ、なんだかかわいい。
 私はその耳をつんつんしたい衝動にかられた。
 が、必死でがまんする。

 でもやっぱりつんつんしたい。
 そーっと指を伸ばしたときだった。

 がばっと部長が顔をあげた。

「今、なにをしようとした」
「別に」
 私は手をひっこめてとぼける。

「こっちが告白しようか悩んでるときに!」

 私は顔をひきつらせた。
 あ、と部長が顔をこわばらせる。

 んん、と咳払いをして、部長はごまかそうとする。
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