〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
夏木伶は取り調べに素直に応じた。初期化状態だった伶のパソコンは復元され、伶の供述とパソコンのデータによって復讐代行人エイジェントの詳細が明らかとなる。
伶が復讐依頼の媒介に作成した〈agent〉アプリの大方の仕組みは、矢野一輝の分析通り。アプリをインストールした時点でインストールした端末の位置情報が伶のパソコンに届く。
伶は東京二十三区内に位置情報が確認できる利用者の中から、彼が定めたいくつかの条件をクリアした人間に復讐代行案内のメールを送っていた。
パソコンのデータには依頼人のリストが入っていた。伶が復讐代行を請け負って殺した被害者の数は七十六人、リストに名前のある依頼人の数は六十七人。
伶に殺人を依頼した六十七人の依頼人は殺人教唆《きょうさ》の罪に問われる。七十六人を殺害した伶の罪は重いが、殺人教唆は教唆犯の罪も重罪となり、有罪は免《まぬが》れない。
依頼料の受け渡しには、東京都内の各駅に設置してある電子ロック式のコインロッカーが使われていた。
まず伶が依頼人宛に都内の駅のコインロッカーを指定し、ロッカーに現金十万を入れてロッカー番号と取り出しに必要な暗証番号の情報を送信フォームから送るようメールで指示。
依頼人は現金十万を持って指定の駅のコインロッカーに向かい、指示通りコインロッカーに十万を預ける。
コインロッカーは日付を跨ぐと追加料金が発生し、利用期限の3日を過ぎると係員が鍵を開けて荷物を取り出してしまう。依頼人が現金を預けたその日に、伶か愁がコインロッカーに出向き十万を回収して受け渡しは完了だ。
銀行を経由した受け渡し方法ではどうしても送金のデータの記録が残る。依頼人と直接対面する受け渡しも、依頼人にエイジェントの素性が知られる恐れと誰かに受け渡し現場を目撃される危険があった。
本来、コインロッカーに現金は預けてはならない。固定観念と現代のデジタル時代の裏をついた、アナログで巧妙な手法だった。
伶が夏木十蔵に持ちかけられた復讐代行ビジネスに手を染めた要因には、木崎愁の存在があった。
エイジェントはジョーカーを継ぐ者。夏木十蔵は伶を第二のジョーカーに仕立てあげるための試運転として、伶に復讐代行ビジネスを行わせていた。
実子の愁だけでなく養子の伶も自分の手足となって動く暗殺奴隷に利用した夏木十蔵は、どこまでも外道な人間だ。
愁は当初から伶の復讐代行ビジネスには難色を示していたが、夏木十蔵の決定が覆せないことも息子である愁は嫌と言うほど理解している。
伶が殺人に手を染める側で愁はいくつもの後悔をその身に燃やしただろう。あの時、伶を止めていればと愁は悔やみ続けていた。
だから彼は最後の最後に、美夜に伶を託すことで伶を止めたのだ。
そして木崎愁は消えた。真夜中の楽園からどこにも行けない美夜を、置いてきぼりにして。
伶が復讐依頼の媒介に作成した〈agent〉アプリの大方の仕組みは、矢野一輝の分析通り。アプリをインストールした時点でインストールした端末の位置情報が伶のパソコンに届く。
伶は東京二十三区内に位置情報が確認できる利用者の中から、彼が定めたいくつかの条件をクリアした人間に復讐代行案内のメールを送っていた。
パソコンのデータには依頼人のリストが入っていた。伶が復讐代行を請け負って殺した被害者の数は七十六人、リストに名前のある依頼人の数は六十七人。
伶に殺人を依頼した六十七人の依頼人は殺人教唆《きょうさ》の罪に問われる。七十六人を殺害した伶の罪は重いが、殺人教唆は教唆犯の罪も重罪となり、有罪は免《まぬが》れない。
依頼料の受け渡しには、東京都内の各駅に設置してある電子ロック式のコインロッカーが使われていた。
まず伶が依頼人宛に都内の駅のコインロッカーを指定し、ロッカーに現金十万を入れてロッカー番号と取り出しに必要な暗証番号の情報を送信フォームから送るようメールで指示。
依頼人は現金十万を持って指定の駅のコインロッカーに向かい、指示通りコインロッカーに十万を預ける。
コインロッカーは日付を跨ぐと追加料金が発生し、利用期限の3日を過ぎると係員が鍵を開けて荷物を取り出してしまう。依頼人が現金を預けたその日に、伶か愁がコインロッカーに出向き十万を回収して受け渡しは完了だ。
銀行を経由した受け渡し方法ではどうしても送金のデータの記録が残る。依頼人と直接対面する受け渡しも、依頼人にエイジェントの素性が知られる恐れと誰かに受け渡し現場を目撃される危険があった。
本来、コインロッカーに現金は預けてはならない。固定観念と現代のデジタル時代の裏をついた、アナログで巧妙な手法だった。
伶が夏木十蔵に持ちかけられた復讐代行ビジネスに手を染めた要因には、木崎愁の存在があった。
エイジェントはジョーカーを継ぐ者。夏木十蔵は伶を第二のジョーカーに仕立てあげるための試運転として、伶に復讐代行ビジネスを行わせていた。
実子の愁だけでなく養子の伶も自分の手足となって動く暗殺奴隷に利用した夏木十蔵は、どこまでも外道な人間だ。
愁は当初から伶の復讐代行ビジネスには難色を示していたが、夏木十蔵の決定が覆せないことも息子である愁は嫌と言うほど理解している。
伶が殺人に手を染める側で愁はいくつもの後悔をその身に燃やしただろう。あの時、伶を止めていればと愁は悔やみ続けていた。
だから彼は最後の最後に、美夜に伶を託すことで伶を止めたのだ。
そして木崎愁は消えた。真夜中の楽園からどこにも行けない美夜を、置いてきぼりにして。