〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
ぽつり、ぽつり、また、ぽつり。一定のテンポを刻んで踊る雨音を美夜は夢うつつに聴いていた。
頬に触れる空気は氷みたいに冷えている。冷えた空気から逃れようと、彼女は毛布にくるまって寝返りを打った。
目を閉じたまま特別に暖かい場所を探して布団の中に潜り込む。新品の匂いがする毛布とシーツの狭間に、美夜が知るぬくもりが隠れていた。
最も安心を得られるぬくもりに力強く引き寄せられて、美夜は眠気の残る重たい瞼を押し上げた。
「起きてたの?」
『今起きた』
美夜が潜り込んだ場所は、同じ布団で仰向けに寝そべる愁の腋の下。ここは美夜にとっての暖かな楽園だ。
冷えた空気に晒された鼻先も頬も、愁に寄り添えばすぐに温まる。
布団から片手を伸ばした愁は畳に転がる腕時計を一瞥した。
人の話し声もしない、車の音も聞こえない。降り続く雨の音だけでは今が何時かもわからない。
『もうすぐ12時か。どうりで腹も減るわけだ』
「サービスエリアのパン屋で買ったパンの余りあったよね。とりあえず朝ご飯それでいい?」
『ん。あとコーヒーな』
港区の芝浦南ふ頭公園で落ち合った美夜と愁は首都高から東北自動車道を通り、サービスエリアで仮眠休憩を挟みながら、24日の午前4時頃に栃木県日光市、鬼怒川《きぬがわ》温泉に程近いのどかな町に辿り着いた。
一部が別荘地区になっている田舎町には、2年前に夏木十蔵が秘密裏に購入した別荘がある。
元々は大阪在住の実業家の所有物件だったが、事業失敗による借金を背負った実業家は栃木の別荘を手放した。それを買い上げたのが夏木十蔵だ。
愁は別荘の件は伶も舞も知らないと言っていた。ここは伶達も夏木コーポレーションの幹部達も知らない秘密の隠れ家。
別荘に到着早々、凍えた身体を風呂で温め合った。車中での仮眠では寝た気がせず二人とも眠気は限界に達していたはずなのに、風呂場で肌を交わらせた数分間は思い出すだけで赤面する。
結局、布団に入って眠ったのは午前6時頃だった。二人して夜更かしの朝寝坊だ。
定期的に掃除業者がメンテナンスしていた別荘は、空き家でも比較的綺麗な状態を保っている。電気ガス水道も通っていた。
別荘の購入記録や別荘に関わるすべてのデータや書類を愁は姿を消す前に抹消したそうだが、警察が隠れ家を突き止めるのは時間の問題。愁の見立てでは、ここに雲隠れしていられる期間も2、3日とのこと。
頬に触れる空気は氷みたいに冷えている。冷えた空気から逃れようと、彼女は毛布にくるまって寝返りを打った。
目を閉じたまま特別に暖かい場所を探して布団の中に潜り込む。新品の匂いがする毛布とシーツの狭間に、美夜が知るぬくもりが隠れていた。
最も安心を得られるぬくもりに力強く引き寄せられて、美夜は眠気の残る重たい瞼を押し上げた。
「起きてたの?」
『今起きた』
美夜が潜り込んだ場所は、同じ布団で仰向けに寝そべる愁の腋の下。ここは美夜にとっての暖かな楽園だ。
冷えた空気に晒された鼻先も頬も、愁に寄り添えばすぐに温まる。
布団から片手を伸ばした愁は畳に転がる腕時計を一瞥した。
人の話し声もしない、車の音も聞こえない。降り続く雨の音だけでは今が何時かもわからない。
『もうすぐ12時か。どうりで腹も減るわけだ』
「サービスエリアのパン屋で買ったパンの余りあったよね。とりあえず朝ご飯それでいい?」
『ん。あとコーヒーな』
港区の芝浦南ふ頭公園で落ち合った美夜と愁は首都高から東北自動車道を通り、サービスエリアで仮眠休憩を挟みながら、24日の午前4時頃に栃木県日光市、鬼怒川《きぬがわ》温泉に程近いのどかな町に辿り着いた。
一部が別荘地区になっている田舎町には、2年前に夏木十蔵が秘密裏に購入した別荘がある。
元々は大阪在住の実業家の所有物件だったが、事業失敗による借金を背負った実業家は栃木の別荘を手放した。それを買い上げたのが夏木十蔵だ。
愁は別荘の件は伶も舞も知らないと言っていた。ここは伶達も夏木コーポレーションの幹部達も知らない秘密の隠れ家。
別荘に到着早々、凍えた身体を風呂で温め合った。車中での仮眠では寝た気がせず二人とも眠気は限界に達していたはずなのに、風呂場で肌を交わらせた数分間は思い出すだけで赤面する。
結局、布団に入って眠ったのは午前6時頃だった。二人して夜更かしの朝寝坊だ。
定期的に掃除業者がメンテナンスしていた別荘は、空き家でも比較的綺麗な状態を保っている。電気ガス水道も通っていた。
別荘の購入記録や別荘に関わるすべてのデータや書類を愁は姿を消す前に抹消したそうだが、警察が隠れ家を突き止めるのは時間の問題。愁の見立てでは、ここに雲隠れしていられる期間も2、3日とのこと。