〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
11月13日(Tue)
昨日より規模を拡大した捜査会議には捜査一課からは伊東班と小山班が、加えて組織犯罪対策部の百瀬警部、芳賀敬太を始めとする特命捜査対策室のチームが顔を揃えている。
捜査会議の議題は雨宮冬悟の事件から始まった。美夜は昨晩、愁から雨宮殺害の自白を聞いている。
雨宮殺害の犯人について刑事達が唱える様々な憶測に罪悪感を抱えて、彼女は彼らのディスカッションを拝聴した。
しかしディスカッションの終盤に百瀬警部が持ち出した話は、それまで鉄壁のポーカーフェイスを貫いていた美夜も平常心ではいられない内容だった。
約10年前から夏木グループ会長、夏木十蔵の周辺では不審な殺人事件、失踪事件が頻繁に起きている。
ある時は夏木コーポレーションの社員が、ある時は夏木十蔵を敵視する裏社会の人間が突如、変死体として現れたり、失踪したまま今も行方が知れない事態がこの数年間に相次いだ。
その不審な殺人事件や失踪事件はちょうど、かつて裏社会を牛耳っていた犯罪組織カオスが暗躍した時期と重なる。その頃から裏社会では密かに囁かれている噂があった。
夏木十蔵には専属の殺し屋がいる。夏木会長に害をなす者を容赦なく殺害するヒットマンの通り名は、ジョーカー。
ジョーカーの存在はヤクザや海外マフィアも恐れるほどだと、百瀬警部は述べた。
『犯罪組織カオスが壊滅する2009年12月までジョーカーはカオスの仕事を請け負っていた形跡があります。当時のカオスの内情は、上野一課長がよくご存知だと思いますが……』
『確かに2007年から2009年にかけて、カオスに属するメンバー以外が関与していると思われる不審な事件があった。それらがすべてジョーカーの犯行だと考えるのも早計だが、いくつかジョーカーの犯行が濃厚な未解決事件をまとめてある。芳賀、モニターに資料を出してくれ』
上野に命じられた芳賀が会議室の大型モニターに、とある事件の捜査資料を表示した。
それは2008年3月、埼玉県川口市で起きた埼玉不動産会社社長夫妻の殺人事件の資料だった。殺害された不動産会社社長、明智信彦は美夜の幼なじみ、佐倉佳苗を殺害した犯人でもある。
『一課長から聞いてるんだ。10年前にお前の同級生が殺された事件と、この不動産会社社長の事件の関係……』
隣席の九条がモニターを見たまま小声で呟いた。佳苗の事件を九条が知っていたのは驚いたが、バディの立場上知る必要があると上野一課長が判断してのことだろう。
「……そうよ。明智は私の幼なじみを殺した犯人」
明智信彦は美夜しか知らない、彼女の隠れた共犯者。佳苗を殺してくれた明智に感謝した美夜の心の闇を、この場にいる者は誰も知らない。
愁は明智の殺害も認めている。この事件をジョーカーの犯行だと睨む上野一課長の慧眼《けいがん》には、さすがの一言だ。
(この頃からジョーカーの仕事を負っていたの? どうしてあの人は……)
昨日より規模を拡大した捜査会議には捜査一課からは伊東班と小山班が、加えて組織犯罪対策部の百瀬警部、芳賀敬太を始めとする特命捜査対策室のチームが顔を揃えている。
捜査会議の議題は雨宮冬悟の事件から始まった。美夜は昨晩、愁から雨宮殺害の自白を聞いている。
雨宮殺害の犯人について刑事達が唱える様々な憶測に罪悪感を抱えて、彼女は彼らのディスカッションを拝聴した。
しかしディスカッションの終盤に百瀬警部が持ち出した話は、それまで鉄壁のポーカーフェイスを貫いていた美夜も平常心ではいられない内容だった。
約10年前から夏木グループ会長、夏木十蔵の周辺では不審な殺人事件、失踪事件が頻繁に起きている。
ある時は夏木コーポレーションの社員が、ある時は夏木十蔵を敵視する裏社会の人間が突如、変死体として現れたり、失踪したまま今も行方が知れない事態がこの数年間に相次いだ。
その不審な殺人事件や失踪事件はちょうど、かつて裏社会を牛耳っていた犯罪組織カオスが暗躍した時期と重なる。その頃から裏社会では密かに囁かれている噂があった。
夏木十蔵には専属の殺し屋がいる。夏木会長に害をなす者を容赦なく殺害するヒットマンの通り名は、ジョーカー。
ジョーカーの存在はヤクザや海外マフィアも恐れるほどだと、百瀬警部は述べた。
『犯罪組織カオスが壊滅する2009年12月までジョーカーはカオスの仕事を請け負っていた形跡があります。当時のカオスの内情は、上野一課長がよくご存知だと思いますが……』
『確かに2007年から2009年にかけて、カオスに属するメンバー以外が関与していると思われる不審な事件があった。それらがすべてジョーカーの犯行だと考えるのも早計だが、いくつかジョーカーの犯行が濃厚な未解決事件をまとめてある。芳賀、モニターに資料を出してくれ』
上野に命じられた芳賀が会議室の大型モニターに、とある事件の捜査資料を表示した。
それは2008年3月、埼玉県川口市で起きた埼玉不動産会社社長夫妻の殺人事件の資料だった。殺害された不動産会社社長、明智信彦は美夜の幼なじみ、佐倉佳苗を殺害した犯人でもある。
『一課長から聞いてるんだ。10年前にお前の同級生が殺された事件と、この不動産会社社長の事件の関係……』
隣席の九条がモニターを見たまま小声で呟いた。佳苗の事件を九条が知っていたのは驚いたが、バディの立場上知る必要があると上野一課長が判断してのことだろう。
「……そうよ。明智は私の幼なじみを殺した犯人」
明智信彦は美夜しか知らない、彼女の隠れた共犯者。佳苗を殺してくれた明智に感謝した美夜の心の闇を、この場にいる者は誰も知らない。
愁は明智の殺害も認めている。この事件をジョーカーの犯行だと睨む上野一課長の慧眼《けいがん》には、さすがの一言だ。
(この頃からジョーカーの仕事を負っていたの? どうしてあの人は……)