〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
ある者の存在によって人生を侵害される苦しみを美夜は痛感している。
雪枝と舞、両者のどちらにも肩入れはしないが、舞さえいなければ……と泣き叫ぶ雪枝の心情は10年前の“松本美夜”とシンクロしていた。
「この期に及んでも夏木さんは謝らない。この子の父親も滝本さん達に謝らない。どっちも悪いことをしたと思っていないからよ。この親子は人間のクズなんだよ! 誰かが裁かないといけないのっ……!」
「ずいぶん偉そうね。自分が舞ちゃんを裁けると思っているとしたら、思い上がりもいい加減にしなさい。人は人を裁けない。裁く権利は誰にもない」
雪枝に関しては九条の説得に任せるつもりでいた。雪枝の心にあと少しの柔軟さが残っていれば、九条の生易しい言葉で雪枝の凍った心は溶けていたはず。
凍えた復讐心で凝り固まった心を砕くには、綺麗事だけでは甘過ぎた。九条とアイコンタクトをかわすと、彼も目を伏せて美夜に頷く。
綺麗事が必要になるのは最後の最後。それまでは九条の優しさは温存しておこう。
「舞ちゃんはどうして雪枝ちゃんをいじめたの? 何かいじめたくなった理由がある?」
話の矛先を向けられた舞は、もじもじと美夜と愁の交互に視線を彷徨《さまよ》わせている。雪枝がいじめられてることを九条に知られたくなかった感情と同様に、舞も愁にだけはいじめを愉《たの》しむ裏の顔を知られたくなかったのだ。
「だって……。ゆきちゃん……掃除をやりなさいよって言ったんだよ。先生でもないのに偉そうに……」
「それは夏木さんが掃除をサボって他の子達にやらせてるから……」
「なんでゆきちゃんが指図するの? あれはゆきちゃんが学級委員になる前だったよね。舞だって他の子に掃除をさせてサボって、悪いとこはあったよ。だけどゆきちゃんってそんなに偉い? 正しいことを言うから偉いの? じゃあゆきちゃんが今、舞にしてることは犯罪だよね? そうは思わないの?」
メイクが崩れて泣き腫らした目元でも舞の眼光は力強い。
手元を椅子に縛り付けられて鼻水すら拭えず、屈辱でしかない姿にまでされて追い詰めされても尚、舞は雪枝に食って掛かる。
舞も只《ただ》では引かない。この強情さは、夏木コーポレーション会長の娘としての舞の意地とプライドだ。
雪枝を睨み付ける舞の鋭利な眼差しが愁を彷彿とさせるのも、やはり夏木十蔵の血は争えない。
雪枝と舞、両者のどちらにも肩入れはしないが、舞さえいなければ……と泣き叫ぶ雪枝の心情は10年前の“松本美夜”とシンクロしていた。
「この期に及んでも夏木さんは謝らない。この子の父親も滝本さん達に謝らない。どっちも悪いことをしたと思っていないからよ。この親子は人間のクズなんだよ! 誰かが裁かないといけないのっ……!」
「ずいぶん偉そうね。自分が舞ちゃんを裁けると思っているとしたら、思い上がりもいい加減にしなさい。人は人を裁けない。裁く権利は誰にもない」
雪枝に関しては九条の説得に任せるつもりでいた。雪枝の心にあと少しの柔軟さが残っていれば、九条の生易しい言葉で雪枝の凍った心は溶けていたはず。
凍えた復讐心で凝り固まった心を砕くには、綺麗事だけでは甘過ぎた。九条とアイコンタクトをかわすと、彼も目を伏せて美夜に頷く。
綺麗事が必要になるのは最後の最後。それまでは九条の優しさは温存しておこう。
「舞ちゃんはどうして雪枝ちゃんをいじめたの? 何かいじめたくなった理由がある?」
話の矛先を向けられた舞は、もじもじと美夜と愁の交互に視線を彷徨《さまよ》わせている。雪枝がいじめられてることを九条に知られたくなかった感情と同様に、舞も愁にだけはいじめを愉《たの》しむ裏の顔を知られたくなかったのだ。
「だって……。ゆきちゃん……掃除をやりなさいよって言ったんだよ。先生でもないのに偉そうに……」
「それは夏木さんが掃除をサボって他の子達にやらせてるから……」
「なんでゆきちゃんが指図するの? あれはゆきちゃんが学級委員になる前だったよね。舞だって他の子に掃除をさせてサボって、悪いとこはあったよ。だけどゆきちゃんってそんなに偉い? 正しいことを言うから偉いの? じゃあゆきちゃんが今、舞にしてることは犯罪だよね? そうは思わないの?」
メイクが崩れて泣き腫らした目元でも舞の眼光は力強い。
手元を椅子に縛り付けられて鼻水すら拭えず、屈辱でしかない姿にまでされて追い詰めされても尚、舞は雪枝に食って掛かる。
舞も只《ただ》では引かない。この強情さは、夏木コーポレーション会長の娘としての舞の意地とプライドだ。
雪枝を睨み付ける舞の鋭利な眼差しが愁を彷彿とさせるのも、やはり夏木十蔵の血は争えない。