七槻くんの懐き度
 どうしたの、と訊くまでもない。ぼふん、と私の体をソファに沈め、ネクタイをほどく。

「とりあえず、しよっか」

 私との関係は仕事のように自信満々といかないらしい、そのくせ、こうしてたまに自信たっぷりに私を押し倒す。

「……待って、まだ木曜日」

「待てません。さっきの『好き』にぐっときた」

 一人部屋にちょうどいい程度の小さなソファの上で、疲れるほどにキスをして、脱がせる間すら惜しいかのように服を捲りあげて、触って舐めて。これでもかというほど私を(あえ)がせ、ソファを(きし)ませる。“して”いるときの七槻くんに可愛げはなく、ただひたすらに私をいじめ抜く。

 終わった後、抱き合いながら呼吸を整えていると、七槻くんは私の首に頬ずりする。

「懐き度が高い」

 とても懐いています、そういう意味だ。

「はいはい、可愛い、可愛い」

「あしらわれてる」

「そんなことないよ」 

 七槻くんは、声と態度がでかく、企画部のエースで、仕事の鬼だ。でもプライベートでは、私の彼氏で、アプローチした側だというたったそれだけの理由でちょっと自信がなくて、まるで飼い犬のように可愛い。誰も知らないその可愛さを、私は今日も独り占めしている。
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